新興VCやPEを支援する「日本版EMP」も後押し
金融庁が2023年末に打ち出した「新興運用業者促進プログラム(日本版EMP:Emerging Managers Program)」もファンド組成を後押しした。
政府はVCやPEなど、新興の資産運用業者の育成に向け、機関投資家の資金流入を促す施策を進めている。これは言ってみれば、機関投資家の資金を受け入れることができる「器」となるVCを立ち上げること自体のハードルが高いものの、一方で新興のVCが機関投資家の資金を得られるチャンスでもある。このタイミングでのVC設立には、そんな意図もあった。
すでに金融機関は日本版EMPの一環として、VCへのLP出資を想定したファンドを設立しており、ALPHAではそれらのファンドからも出資を得た。
アニメから高齢化まで「日本ならでは」の投資を実行
ALPHAの投資対象は、アニメをはじめとするコンテンツや製造業などの「日本ならではの強みを持つスタートアップ」と、高齢化や労働力減少といった「日本ならではの課題を解決仕様とするスタートアップ」など、広範囲を想定する。成長ステージについてもシードからレイターまで広く設定し、1件あたり数千万円から最大20億円程度の投資を想定する。
ファンド組成の難しさに加えて、東京証券取引所が、グロース市場の上場基準を「上場5年後に時価総額100億円以上」に変更する意向を示すなど、スタートアップにとっては「逆風」の時代だ。しかしALPHAは今こそが好機だと語る。
「スタートアップにとっても目線を上げる機会。サステイナブルなビジネスモデルをしっかり作り上げることが大事だという話でしかない。しっかりと(時価総額)100億円、200億円を目指す企業を支援していく」(立岡氏)
「企業や事業の価値は、イグジットがIPOでもM&Aでも変わらない。本質的にいい事業を見つける。作る。支援する——これがすべて。これまで愚直にやってきたことを、これからも続けるだけだ」(田中氏)