「事実」ではなく、「解釈」を引き出している
その正体が、「事実」と「解釈」です。
B「この前の土日は、何をしていましたか?」
実は、質問Aは、相手から「思い込み」を引き出してしまう「思い込み質問」です。
質問Aは、「いつも」「普段」のように、一般化された質問の仕方ですね。こう聞かれると、人は「自分が休みにやっていると“思っていること”」を考えて答える傾向にあります。
「いつも質問」の良くない点は、「思い込み」を事実を見誤ってしまう点です。「いつも~」という質問によって、「思い込み」を答えることになってしまい、正しい答えができなくなっていたのです。同様に、「いつもは」「普通は」「一般に」などなどを使った質問は、事実を尋ねているようでいて、実は、全く違うことを尋ねているのです。
「なぜか話が噛み合わない」の正体
ここで特に重要なのは、「会話そのものは成立していた」のに、「会話の内容に、ズレがあった」ということです。言ってしまえば、お互い無意識のうちに、コミュニケーションの疎通がうまくいっていないわけです。
事実を正確に引き出すことができないのは、致命的な問題を引き起こすきっかけになります。この一回はささいなことかもしれませんが、雑談だけでなく、職場での仕事や、飲み会の場において、こういった「コミュニケーションのズレ」は非常に多く見受けられます。
これがゆくゆくは「なぜか話が噛み合わない」「言ったはずなのに、伝わっていない」という悲劇を起こす一歩目になるのです。最終的には、相手との関係性が悪くなることもありえます。
「聞きやすい事実」から聞く
ちなみに質問Bは、本書で紹介している「事実質問」です。賢い人は事実に絞った質問を駆使することで、コミュニケーションのズレを防ぎ、相手との関係をよりよく構築しているのです。
ちなみに、「いきなりBのように踏み込んだ質問をしてもいいの?」と気になる人もいるかもしれません。これはひとえに相手との関係次第ですが、事実質問をするときのコツは、相手が「答えやすい質問」をすることです。そのため、聞きづらければ「どこかに出かけた?」のようなより答えやすい質問に変えるのもよいでしょう。「誰と出かけた?」と聞くのは、関係性が近くない場合、たとえ事実質問でも良い質問とは言えないでしょう。
(本記事は『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』に関する書き下ろしです)