ようやく処理を終わらせて、再び持ち場に戻る。イヤな気持ちを引きずっていても仕方ないので、目の前の掃除に集中する。

 すると30分もしないうち、また別のキャストが私のところへ急いで近寄ってくる*。今日のように、真夏の不快指数の高い日には嘔吐処理も増えるのだ。

 よりにもよって、2回連続で嘔吐処理の当たりの日か、ツイてない。息を切らせながらキャストはこう言った。

「向こうでゲストの男の子がポップコーンをぶちまけちゃいまして。処理していただけませんか?」

「お安い御用です!」

 私は喜び勇んで駆けつける。

週に1回程度、発生する。
季節や混雑度合いなどにも関係し、日に2回のこともあれば、半月以上ないこともある。
トイブルーム
スイーピングする際に使用するホウキ。長さは4種類ほどある。穂先部分の固さや長さがそれぞれ異なっているので、使用するときに毎回自分の使いやすいものを選ぶ。毎日、何時間も持って働くため、私は右手の中指がバネ指(指の腱鞘炎の一種で、曲げた指を伸ばそうとするとバネのようにカックンとはじけてしまう)の症状を示した。同じ症状を訴える同僚も複数名いた。私の場合、痛みはなく、1年くらいで自然に治った。
ダストパン
L字グリップのプラスチック製チリトリ。サイズは大小の2種類あり、小サイズのほうが軽くて使いやすいので人気。同じ小サイズでも新しいものが使いやすいのでオンステージに出る前に毎回選ぶ。ほかのキャストが間違わないよう番号が記してあるのだが、休憩時バックステージに置いておくと、旅館の大浴場でのスリッパのごとく取り違えが発生する。
キャストが私のところへ急いで近寄ってくる
こんなとき、よい知らせなどまずない。どうせロクなことはないとドキッとする瞬間である。