「三つ又の矛」のtrident(トライデント)は「tri(三つ)+dent(歯)」が語源。dent-は印欧祖語で「歯」を表し、dental(歯の)、dentist(歯科医)、denture(入れ歯)、dandelion(タンポポ)などが同系語だ。

 dandelionは「ライオンの歯」が語源で、タンポポの葉がライオンの歯に似ていることに由来する。歯ごたえのあるようにパスタを茹でた状態を「アルデンテ(al dente)」と言うが、英語にすればto the toothとなる。段落の1行目を字下げした時の形が歯に似ていることから、「字下げする、へこみをつける」はindent(インデント)と言う。

泡から生まれた愛と美の女神アフロディテ

 息子のクロノスにより切り落とされ海に投げ込まれた天空の神ウラノスの男根の周りに泡が生じ、そこからアフロディテ(Aphrodite)が生まれる。アフロディテは西風の神ゼピュロス(Zephyros)によりキプロス島まで運ばれたと伝えられており、後に彼女は愛と美と豊穣の女神としてオリンポス12 神の一柱になっている。

 なお、アフロディテはギリシャ語で「泡」のaphros(アフロス)に由来するという説があるが真偽のほどは定かではない。

 キプロス(Cyprus)島はエーゲ海南東部にあり、古代から銅の産地として知られており、英語のcopper(銅)の語源になっているが、Cyprusは「西洋ヒノキ」や「イトスギ」とも呼ばれるcypressが基になっており、どちらも英語の発音は「サイプラス」である。

巨人族ギガンテスはジャイアント、ギガ(バイト)の語源

 一方、切り落とされた男根から出た血液が大地に染み込みガイアが身ごもったことで生まれたのが巨人族ギガンテス(Gigantes)だ。ヘシオドスの『神統記』では、ギガン族は輝かしい青銅の鎧(よろい)をまとい、長い槍を持つ者として描かれているが、後には多くの画家たちによって、上半身が人間で、両脚は蛇のような姿の怪物として描かれている。

 ガイアはティタン神族がタルタロスに幽閉されたことに憤慨し、ティタノマキアの戦いではゼウス側に加勢していたギガス族に協力を求め、オリンポスの神々との戦いが再び勃発する。この戦いがギガントマキアだ。