Gigantesの単数形は「ギガス(Gigas)」で、英語のgiant(巨人)、gigantic(巨大な)の基になっている。データのサイズを表す「バイト(byte)」は「8ビット(bit)」のことで、「ギガバイト(gigabyte)」は約「10億バイト」のこと、byteは「少し、小片」のbitと同語源だ。

 ギガントマキアの戦いは当初、互角の状態が続いていた。ギガス族を打ち倒すことができるのは人間だけであると予言があり、ゼウスはミケーネ王の娘で婚約中のアルクメネを騙(だま)して交わることで、半神半人のヘラクラスが生まれる。ヘラクレスはギリシャ神話最大の英雄であり、彼を味方につけることで、戦争はオリンポスの神々の勝利に終わる。

最大最強の怪物テュポン

 ギガス族が皆殺しにされたことにガイアは怒りを増幅させ、弟のタルタロスと交わり、テュポン(Typhon)を産み、再度ゼウスを倒そうと試みる。

 テュポンは巨大な怪物で、髪が星に触れるほど長く、両腕を広げると世界の東から西まで包むほど大きく、両肩からは100の蛇の頭が生え、下半身は毒蛇のような姿をしていた。テュポンが発する轟音は、タルタロスのティタンたちも恐れおののくほどのものだった。

 ガイアがテュポンをオリンポスに送り出すと、その姿を見た神々は恐ろしさのあまり、動物の姿に変身してエジプトに逃げていった。エジプトの神々が動物の姿をしているのはこのためだとも言われている。

 一人残されたゼウスは雷霆とアダマスの鎌で応戦するも、テュポンはそれを奪い取り、ゼウスの手足の腱を切り落として、パルナッソス山の麓(ふもと)にあるデルポイ近くの洞窟に閉じ込めてしまう。これがギリシャ神話の中でゼウスが喫した唯一の敗北とされる。テュポンはゼウスの腱を熊の皮に隠して、自らは傷の治療のために母のガイアの所に向かう。

 パルナッソス山はアポロンとムーサイの聖地であり、文芸の中心地でもあった。英語名はMount Parnassus(パーナッサスと発音)で、この名称にあやかった地名がパリを流れるセーヌ川左岸に位置する芸術の中心地Montparnasse(モンパルナス)だ。

 日本でも人気が高いケーキのモンブランは、アルプス最高峰で「白い山」が原義のMont Blanc(モンブランと発音)に由来する。

 いかがだったろうか。古代ギリシャの豊かな神話世界は、言葉の成り立ちや意味の奥深さを理解するうえで格好の素材であり、単なる暗記では味わえない知的な楽しみをもたらしてくれるはずだ。