典型的な主婦像を描いた
さだまさしの「関白宣言」
典型的な主婦像は、ポピュラーソングの中でもしばしば表現されてきた。その代表例として、男性シンガー・ソングライターさだまさしのヒット曲「関白宣言」(1979)が挙げられる。この楽曲では、これから夫となる人物が、料理、美容ケア、嫁姑関係など、彼が望む妻としての義務をすべて婚約者に押し付けているのだ。

この「関白宣言」はリリース当時、男女間の「自然」な役割をテーマにした、心温まるユーモアとして理解されていた。しかし歌詞の中では、家事を妻に頼らなければならない無能な男性をユーモラスに(時にはからかい混じりに)描く一方で、ジェンダーに基づく労働分業や、家長としての夫の役割が効果的に強調されている。
さだまさしの歌詞は、この当時の日本における、ある広範な問題を例示している。性役割に基づく二分法が、実質的には多くの女性を従属的な立場に置くものであったということだ。これは同時期のポピュラー音楽の歌詞にもよく見られる傾向である。
さだの楽曲における力関係はきわめて明確であるが、他の多くの楽曲はより暗黙の形をとってジェンダー間の上下関係を伝えている。