物語の主人公がもし「嵩」だったら
暢はどんな俳優だったのか?
そこへさらに援護射撃してくる者が現れた。
琴子(鳴海唯)だ。
「女ごころがちっともわかっちゃせん」と割って入ってくる。
「のぶちゃんの同期入社の小田です」
大声を出して割り込んできたあと、一転して楚々と挨拶。さすが猫かぶり。背後で飲んで聞いていた琴子は酔った勢いか、のぶが、嵩の入社に一役買っていると明かす。嵩の漫画を見せて猛プッシュしたことを嵩ははじめて知る。
琴子は見れば見るほど、ミス高知の漫画のキャラに似ている。嵩が主人公だったら、暢は琴子みたいな人だっただろうなあと思う。楚々として見えながら、芯はしっかりしていて、きついことをきつくなく聞かせながら、嵩を引っ張っていく感じ。水のように透明感があって、そばにいるとなんか潤う。鳴海唯はそんな感じを表現できる俳優だ。
でものぶが主人公なので、『あんぱん』では今田美桜のような実績や印象の強い俳優が良かったのだろう。そして、完璧な妻キャラではなく、欠点がたくさんあって迷いに迷っている人物を演じることを期待されたのであろう。
夫を亡くした悲しみ、夫の言うことに耳を貸さず子どもたちに間違ったことを教えてしまった後悔を抱えながら、でも、それを表に出してしまったら苦しくなるばかりなので、中に秘めて、何事もないように振る舞い続けている。嵩だけがのぶのそういうところをわかっている。
今回の東京出張は、独楽のように独りが楽しいと言っている場合ではなく、嵩とのぶが近づいていくチャンス。
それにしても、琴子のような魅力的な女性がいても、嵩も健太郎も彼女と恋愛の流れにはならず、のぶとメイコがいるというのが不思議だ。
