しかし、いくら日本人が「日本中心で物事を考えるべき」と叫んだところで、他の国は知ったことではない。結果、どんどん孤立して経済も疲弊していく。そうやってさらに弱った日本人はどうなるかというと、「国家主義」へのめり込んでいくようになる。

 このあたりは、著作が内務省によって発売禁止処分になってもファシズムと共産主義に抵抗し続けた東京帝国大学経済学部の河合栄治郎教授の「分析」が参考になる。

「吾が国の政治経済等の一切が行詰りの状勢にあり、陰鬱の気が全社会に漲りつつあるは、今日に始まつたことではない。(中略)マルキシズムが吾が国に不相当の勢力をえたのも、この心理に依存することが多いのであるが、マルシズムに結局信を置き得ない国民は、対案を国家主義に求めたのである」(『フアッシズム批判』(日本論評社) 116ページ、旧字体は新字体に変換)

 こうして国家主義が台頭していく中で1938年に「国家総動員法」ができる。そして2年後、“日本人ファースト政治家”として確固たる地位を築いていた松岡が主導した日独伊三国同盟が締結される。アメリカ、イギリス、ソ連が敵視していたナチスドイツと手を組んだことで、日本の運命は完全に決まった。

 このような「日本第一主義からの国家主義へ」という流れは、令和日本でも案外簡単に「再現」されるのではないかと思っている。

 政治経済も行き詰まって陰鬱とした今の日本で、政府に失望した有権者がどこに票を投じるのか。

 NHKが政党支持率を調べた世論調査では、立憲民主党が8.5%や日本共産党が3.1%であることからもわかるように、リベラルな政党は支持を集められていない。保守色を強めている国民民主党は5.1%で1週間前と比べて0.7ポイント下がった。あれもダメ、これも期待できないとなると、「国家主義」に流れる人もあらわれるはずだ。

 参政党はそういうニーズの受け皿になる可能性がある。実際、同調査での支持率は4.2%で1週間前から1.1ポイント上昇した。同党は憲法構想案でも「国家主義」を隠していない。