筆者が乗った「夢空間」も保存されている。引退後、1両は江東区のフレンチレストラン「アタゴール」に、2両は「ららぽーと新三郷」に引き取られたが、後者は活用されないまま状態が悪化していた。

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 そんな中、東京都清瀬市は2023年に、清瀬市中央公園と隣接する複合施設の整備にあたり、子どもから高齢者まで多世代が交流するシンボルとして鉄道車両の設置を決定。「夢空間」を譲り受けて、飲食やイベントなどに活用すると発表した。

 このような「活用」は得てして、改造で原型を失ったり、屋外で雨ざらしとなり急速に劣化が進んだりと、残念な結果になりがちだ。しかし、清瀬市は失われた部品も含めてオリジナルの姿に復原し、屋根の設置、防汚コーティングなど維持にも力を入れていくと表明している。来年2月の複合施設オープンにあわせて公開予定とのことなので楽しみだ。

 さて「カシオペア」はどうなるのか。JR東日本の喜勢陽一社長は今年5月「現在のように寝台特急としての利用はこの6月でひとつの節目にしたい」として、今後は「さまざまな要望をいただいているので、それを踏まえて決めていきたい」と述べている。

「節目」とは連続した流れの中に現れる“くびれ”である。つまり「カシオペア」はこのまま廃車解体されて歴史を終えるのではなく、第二の人生が始まることを意味している。同社グループが運営する鉄道博物館での展示が最も無難な形であり、将来的にはそのように落ち着くだろうが、ひとまずは同車が提供した「夢」をもう一度、身近に体験できるような形になることを願いたい。