業務や趣味用として
世界中で実用化されている技術
平田氏は続ける。
「偽装トラックの荷台から飛ばすという、まるでドッキリのテレビ番組のような作戦です。この技術はすでにウクライナ軍が夜間に弾薬を落とす『ヴァンパイアドローン』などでも使っており、本来は業務や趣味用として日本を含む世界中で実用化されています」
「今回の軍事作戦で使われたアプリは無料で公開されており、専門知識と手間は必要ですが、対応するフライトコントローラーやラズベリーパイのような安価な小型コンピューター、SIMカード、カメラなど、弾薬以外の部品はAmazonやAliExpressなどで手に入ります」
「一般的なドローンとの違いは、機体と操縦者が直接電波でつながるのではなく、ドローンに挿したSIMカードで携帯電波を使い、インターネット経由でPCの操作アプリと接続する点です。通信が可能な場所であれば、距離に関係なく遠隔操作ができます」
「現地ドローンのカメラ動画を映す手元のモニターは、ネットや携帯の電波状況にもよりますが、理論上は0.5秒以上の遅れが生じます。例えるなら、オンラインクレーンゲームのように映像に遅延がある中で、地図やGPSを使ってある程度自動飛行し、最後は人の操作で調整して着陸(自爆)します。また一部の機種では最後の誘導にAIを使用したという報道もあります」
「このような仕組みのため、電波妨害やスマホと区別がつきにくく検知すら困難です。これらを偽装トラックで目標付近まで運び、駐機中の爆撃機という固定目標を狙ったことで、『クモの巣作戦』と呼ばれる奇襲が成立したのです。こうした知識さえあれば誰でも使えるような民生技術が軍事的に大きな影響を持つ時代になったことを意識すべきです」
今回の攻撃は、アメリカにも衝撃を与えた。元アメリカ陸軍欧州総司令官のベン・ホッジス退役大将は、ロシアの巡航ミサイル発射能力に大きな打撃を与えたと述べ、爆発物を積んだトラックがロシアの奥深くに入り込めた理由をロシア側が解明できずにいると指摘した。