数万円のドローンに対して
数千万円のミサイルで対応する非効率
ワシントン・ポスト紙も、アメリカ自身がこうした低コストの攻撃に脆弱(ぜいじゃく)であることが明らかになったと報じた。同紙は、コンテナやトラックに隠されたドローン攻撃がアメリカ本土や海外基地でも起こりうると警告している。
ウクライナ戦争では、安価なドローンが歩兵支援、砲撃の代替、偵察など多用途に使われてきたが、今回の攻撃は、戦略兵器に対してもドローンが脅威になりうることを明示した。アメリカ軍高官も、数万円のドローンに対して数千万円のミサイルで対応する現状の非効率さを問題視している。
携帯電話網を用いた遠隔操作は、通信さえ届けばどこからでも、どこへでも攻撃が可能であり、防御が非常に難しい。
同様の手法で
日本が攻撃される可能性は
仮に日本が同様の手法で攻撃またはテロを受ける話題になると、日本で軍事の専門家を名乗る人の中には、ロシアとウクライナの地理的条件の違いを理由に「状況が異なる」とする見方もあるが、技術的本質を見誤ってはならない。
今回実行された場所が陸続きであっただけで、攻撃の中心にあるのは、携帯通信とSIMカードを使った「民生技術による遠隔操作ドローン」であり、これは地理条件に左右されるものではない。
たとえ日本が島国であっても、海上輸送や航空貨物、国内の協力者などを通じて攻撃手段を持ち込むことは十分に可能である。操作自体は数千キロ離れた海外からでも実行できる。ロシアの広さが工作員の潜伏に有利だったとしても、それは運用上の要素に過ぎず、技術的な脅威の本質を変えるものではない。
むしろ、日本のように都市部に人口が密集し、重要インフラが集中する地域に同様の攻撃が行われた場合、被害はより深刻になる恐れがある。重要なのは、安価で手に入りやすい民生技術の組み合わせによって、何年もかけて巨額の予算を注ぎ込んで開発された防衛システムを無力化できる現実を認めることである。
すでに、対ドローン用レーザー兵器のような未実用の技術に期待を寄せる時代は終わっている。必要なのは、現実的な脅威に即した具体的な対策だ。