部品の欠品や取り付け間違いをAIで自動検知するシステム

 京都(大山崎)工場 組立課の西川翼氏が発表したのは、AIを活用したジャンクションボックスの欠品・取り付け間違い検知システムだ。

 ジャンクションボックスとは、自動車のさまざまな電気回路を制御する重要な部品だ。内部の部品配列は複雑で、組み合わせパターンは1000種類以上に及ぶ。一つでも取り付け間違いや欠品があると、エンジンが動かなくなったり電装部品が誤動作したりする重大な不具合につながる。

 西川氏が開発したのは、こうした部品の欠品や取り付け間違いをAIで自動検知するシステム。「数万台に1件という確率でも、一度発生すれば重大な問題に発展する可能性がある」という自分たちの切実な課題に応えたものだ。

京都(大山崎)工場では、西川氏を含むメンバーが中心となってAI活用を進めている。 Photo by M.S京都(大山崎)工場では、西川氏を含むメンバーが中心となってAI活用を進めている Photo by M.S.

30時間かかっていた学習時間を30秒に短縮

 開発は試行錯誤の連続だったという。特に、AIの学習データ作成作業(アノテーション)に工夫を凝らし、30時間かかっていた作業を30秒まで短縮した。西川氏は「このシステムは他の作業工程にも応用できる」とし、さらなる自動化・省力化に意欲を示した。

 西川氏はもともと工場の組み立てラインで働いていたが、DX推進室が主催するAI研修に参加し、ゼロからAIやプログラミングを学んだ。この研修は2カ月間でPython(パイソン)を基礎から学び、自分の業務課題を実際にシステムを作って解決し、工場長に成果を発表するという実践的な内容だ。

 ブースを訪れた西川氏の二人の元上司が、ひとしきり説明を聞いて「西川、今こんなことやってるんだ。すごいなぁ」「パソコン好きだったもんな」とうれしそうに笑っていた。その光景がまぶしすぎて、シャッターを切るのを忘れてしまった。