業務上の指摘とはいえ、部下を泣かせたら「パワハラ」?
Aさんは、私に相談する中で、「これまでも、書類に誤字脱字があれば、その都度指摘をして修正させていました。今回も自席からBさんに声をかけただけなのに、私の何がいけなかったのでしょうか?」と、心配そうな様子でした。そして「もしかして、パワハラの事案として扱われてしまうのではないか?今後Bさんとどう関わったらいいのか?」と質問されました。
Aさんは5年程度の管理職経験もあり、これまでにも部下の育成を行ってきています。周囲の人からも信頼されており、これまでもパワハラとは無縁の方です。
その後、Bさんとオンラインで面談することになりました。Bさんにその時の話を聞いてみたところ、「実は、1カ月前に彼との別れ話が出て、それ以来仕事に集中できず、ミスを繰り返してしまうことが増えた。その前日に、彼と大きなけんかをして感情が不安定な状態だった」と話してくれました。ついイライラして上司のAさんに対して、声を荒らげてしまった、と反省していました。
Bさんは、結局、会社を2日休みましたが、面談の後、けろりとして会社に出社したそうです。しかしそれ以来、AさんはBさんに対して、腫れ物に触るようにしか接することができなくなってしまい、現在はCさんを経由してしかBさんとやりとりができなくなってしまったということです。
仕事のミスの原因が、プライベートの可能性もある
今回のケースは、2年目社員のBさんが外部のカウンセラー(私)に自分からプライベートの話をしてくれたことによって、2日間休んで会社に帰ってきてくれましたが、実はこうしたケースは珍しくありません。下手をすると、そのまま休みが続いて若手社員が退職してしまう、ということもあるかもしれません。
理由がよくわからないままで若手が退職してしまった場合、会社や同僚の人たちはその原因を業務上の何かに求めがちです。しかし退職の直接の原因は仕事や業務ではなく、プライベートのできごとが仕事に影響していたのかもしれません。もちろん仕事が退職のきっかけということもあるでしょうが、その社員は、家庭環境、友人関係、恋愛関係、健康問題、介護問題、金銭問題など何かしらの個人的な事情を抱えているかもしれません。
こうした状況は他者からは見えにくく、また、社内の誰かに相談もしにくい内容もあることでしょう。仕事は仕事、プライベートはプライベートと割り切りたいところではありますが、今回の例のように、いつもは何でもないことなのに、心の余裕がないために相手の指摘を受け入れられなくなるという場合もあります。
こうしたケースで、上司はどうふるまったらいいのでしょうか?