三井住友 名門「財閥」の野望#7Photo by Mieko Arai

20年前、銀行業界では旧住友銀行と三井系の旧さくら銀行が合併に進んだが、同じ頃に化学業界で検討された住友化学と三井化学の統合は幻に終わった。背景には、銀行にはない化学メーカー独特の強みと、揺るぎないプライドがある。特集『三井住友 名門「財閥」の野望』(全18回)の#7では、統合破談以降、三井化学と住友化学が歩んだ試練と復活の20年を追う。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)

実現すれば三菱ケミカルを超え
業界首位に躍り出ていた「世紀の統合」

 銀行が歩んだのは「統合の20年」だが、化学が歩んだのは「統合『破談』の20年」である――。

 旧住友銀行と三井系の旧さくら銀行が経営統合を発表し、世間をあっと言わせた1年後の2000年11月。今度は化学業界で驚きの一大発表がされた。三井化学と住友化学工業(現住友化学)の統合発表だ。

 当時、日本の化学メーカーは事業環境の悪化に悩まされていた。石油化学製品の国内市場の縮小に、石化製品における輸入関税の段階的な引き下げ、アジアといった輸出市場での競合他社との競争激化、欧米の大手化学メーカーの規模拡大……。

 まさに八方ふさがりである。その苦しい状況を打破しようと三井化学と住友化学が打った一手が、旧財閥の高くて厚い壁を越えた統合だった。

 実現すれば三菱化学(現三菱ケミカル)を抜き、国内首位の規模を手にしたはずだ。国内の石化事業に強い三井化学と、農薬や医薬品事業に強い住友化学という国内化学大手同士の統合は、競合他社を震撼させたものである。

 ところが、この“世紀の統合”は03年3月に白紙撤回されてしまう。

 以降、日本の化学業界では、昭和電工が約1兆円の巨額を投じて日立製作所から日立化成(現昭和電工マテリアルズ)を買収するまで、17年の長きにわたって大型再編が途絶えた。

 その背景には、銀行にはない化学メーカー独特の強みと、揺るぎないプライドがある。三井化学と住友化学も結局のところ、八方ふさがりを自力で脱出し、独立独歩の体制を極めている。詳しく追っていこう。