東京で開催された「阿修羅展」が、想像を絶する人気の中で閉幕した。360度方向から眺められる斬新な展示方法や、主催者側の朝日新聞社の的確なパブリシティ戦略も見事だったが、底流にある「仏像ブーム」のほうが、顕著に見えたエクスポジションだったといえるだろう。
話がそれているように見えるが、実はそうではない。今回紹介するのは、仏教と仏教文化を学び、研究することができる通信制の大学院である。
佛教大学といえば、近畿圏での知名度は圧倒的。関東でも、スポーツの活躍で知っている人が多い大学だろう。学校名の通り、法然上人を開祖とする浄土宗系の大学である。もともとは僧侶養成のための機関であり、いまでもその機能を持っているが、すでに5学部と大学院4研究科を構える総合大学としてのキャラクターのほうが勝っている。
その組織の中でも評価が高いのが通信教育課程の設置・運営である。理系の保健医療技術学部を除いて、4学部4研究科に対応する通信教育課程がある。
もともと佛教大学の通信教育は、50年以上の歴史を誇るもの。関西の大学通信教育の草分けであり、運営の質の高さには定評がある。通信教育課程を置く大学院は文学研究科、教育学研究科、社会学研究科、社会福祉学研究科。そのうち、今回注目した文学研究科には浄土学、仏教学、仏教文化、日本史学、東洋史学、国文学、中国文学、英米文学の8専攻がおかれている。
仏教系の専攻は浄土学、仏教学、仏教文化専攻の3つ。誤解がないように言っておくが、仏教系の専攻であるからといって、僧侶の養成とは関係がない(それはむしろ学部)。仏教の研究者であることと宗教者であることは、似ているようで非なるもの。その2つを兼ねている人間も多いが、立場を混同することはないし、あってはならない。逆を返せば、僧侶でなくてもこれらの専攻を目指すことになんの不条理もない。ちなみに、仏教芸術と最も親和性の高いのは仏教文化専攻だろう。
仏教ブームは、言ってみれば仏教美術、仏教芸術への興味の高まりである。仏像をよりよく知るためには仏教の知識が有用だが、誰もが僧侶になりたいわけではないだろう。仏像や仏教を高度に知識のレベルで把握するためには高等教育機関、大学や大学院が相応しい。ビジネス書まがいの仏教書や、お遍路マニアの体験談とは、まったく異質の智が開かれているのである。
なおこの大学院には仏教学専攻と日本史学専攻の名のもとに、博士後期課程がおかれている。
費用は修士課程で入学金が53,000円、 学費が年額237,000円。このほかにスクーリング履修費が 1単位につき11,000円などが必要となる。正直言って、これ以上に経済的な負担の軽い大学院は非常に少ない。
入学願書の受付は、去年の例では修士10月、博士11月。試験は1次が「専門試験」、2次が面接スタイル。過去問が大学から入手可能。年内に試験が行なわれ、合否が決定する。