プロに教わったほうが、伝え方もうまくなる

佐々木圭一(ささき・けいいち)
コピーライター/作詞家/上智大学非常勤講師 上智大学大学院を卒業後、97年広告会社に入社。後に伝説のクリエーター、リー・クロウのもと米国で2年間インターナショナルな仕事に従事。日本人初、米国 の広告賞One Show Designでゴールド賞を獲得(Mr.Children)。アジア初、6カ国歌姫プロジェクト(アジエンス)。カンヌ国際クリエイティブアワードでシルバー賞他計3つ獲得、AdFestでゴールド賞2つ獲得、など国内外51のアワードを獲得。郷ひろみ・Chemistryの作詞家としてアルバム・オリコン1位を2度獲得。Photo by Tomohito Ishigo

岩田 伝え方というのは、意外に深いものだと僕は思っていたんです。その人が持っている教養や歴史、そういうものが、氷山の一角として伝え方に出てくる。
 その意味で、スターバックスのお店の人たちのレベルは、きっと高いですね。時給のアルバイトさんでも、ホテル並みの接客ですし、ここまで気が付くのか、と関心することも多々ある。
 僕が今も覚えているのは、プライベートで銀座に行ったとき、コーヒーを買いにスターバックスに入ったときのことです。プライベートですから、「あ、岩田さん」とは言われたくなかった。でも、まったく気づいてもらえないのも、寂しいわけですね。
 実際、レジの女の子は気づかなかった。ところが、カウンターで商品を渡してくれるちょっとベテランのパートナーは、コーヒーを手渡しながら一言、こう添えたんです。「今日はお休みですか」と。
 絶妙の言葉だと思いました。彼女は僕がスターバックスのCEOだと知っている。かつ、今日はプライベートで来ているから、名前を呼んだりしませんよ、と。あの一瞬で、僕の思いを見事に表現する一言が出てきたわけです。スターバックスのお店の人たちの接客レベルの高さは、改めてすごいと思いましたよね。
 なんとかのマニュアルに出ている、とかじゃないわけです。もっと深いものが、そこにあるような気がしたんです。

佐々木 人間力のようなもの、ですね。たしかにそういう面もあると思います。一方で、伝え方には技術の側面もあると思うんです。それを技術として学ぶことができれば、ポンと上達できる。
 例えば、ゴルフを河原で一人で練習する。それもひとつの方法ですが、プロの選手のレッスンを受けるのも、方法ですよね。横から、プロに教えてもらったら、やっぱり一人でやるよりも、伸びると思うんです。
 伝え方にもそういうところがあるのに、これまでは世の中で学べるものだと捉えられていなかった。伝え方を学ぶ、というコンセプト自体がなかったんじゃないかと思うんです。
 実際、僕は大学で教えているんですが、今の学生は持っている情報の量も膨大だし、いい意味で効率的にいろんなものを突き詰めることができる。面白いことを考えているな、これが実現したらすごいな、と思えるようなことをよく耳にするわけです。しかも、パワーもあるし、やる気もある。
 ところが、それを誰かに伝えるとき、伝え方がもうひとつ上手ではないために、例えば企業に提案するときもうまくいかなかったりする。本質の部分を聞かれないまま、帰ってきてしまう。伝え方の問題で、結果が出せない姿をよく見ていたんです。
 彼らに伝え方の技術を教えることで、ワンランク上のアクションができるようになると思ったんですめ。

岩田 それこそ社会人になって、10年かけて学ぶこともできるかもしれないけれど、本を読むことで、2、3時間で知ることができる、ということですね。あとは、体系的に正しく整理されていますから、学校の教科書みたいに学べる。
 あとは、どんどん実践することに尽きますね。

佐々木 そうなんです。実践してもらうことが大事なんです。