広告は、誰も読みたいと思っていない

岩田 ご経歴を見てびっくりしたんですが、佐々木さん、理系なんですよね。それで、よく会社がコピーライターに配属しましたね。会社がすごいと思いました。

佐々木 どういうことだったんでしょうね(笑)。

岩田 どこかに光るものがあったんでしょう。

佐々木 本当に人生って、面白いな、と思います。今回、本を出したのも、人生って面白いと思った瞬間ではあったんですが、コピーライターになったときも、そんなふうに思いました。相当意外でした。人生、こんな意外なステップが起こりうるんだ、と。

岩田 それで、ずいぶん苦労されるわけですね。文章が得意だったわけでも、なんでもなかった、とお書きになられていて。

佐々木 そうなんです。でも、だからこそわかったこともありました。それこそ『伝え方が9割』というと、口先で騙してやろう、みたいにパッと見は思われてしまう人もいるんですが、実はそういうことではまったくないんですよね。隠れコンセプトは、「相手のことを想像する技術」なんです。

岩田 なるほど、そういうことなんですね。

佐々木 どうして僕がコピーライターとして今のような仕事ができているか。この本が書けたのか。それは、これまでの経験に尽きるんです。
 広告のコピーって、もともと誰も読みたくないものなんです。広告なんて誰も見たくない。雑誌を買うとき、広告を見るために買う人はいないですよね。雑誌の作り手も、広告を見せようとして作っているわけではない。テレビCMにしても、本当は誰も見たくないと思うんですよ。買って買って、とうるさいわけで。
 ですから、もともとものすごいネガティブな、マイナスな状態から、誰も興味を持とうと思っていないものに対して、興味を持ってもらわないといけないわけです。
 だから、雑誌の読み手であったり、テレビを見る人であったり、世の中で生活している人たちが、どうすれば振り向いてくれるか、ということを毎日、突き詰め続けたんですね。
 結果として、相手のことを想像することこそが大事なんだ、ということが、自然に身についていった。そこから、どうすれば伝わるか、ということがまとめられていったんです。

岩田 結局、そういう感覚を持っている人が、伝えられる人ですよね。例えばメールひとつとってみても、相手の身になったら、こんなメール読まない、というメールがあるじゃないですか。とにかくダーっといっぱい書かれていたり。
 学生さんから、タメ口のような文章でメールが送られてくることもありますね。これでは、やっぱり返事をする気にならない(笑)。もっと基本的なことを学んできてくれ、ということで。まあ、微笑ましいという見方もありますが、いつまでもそうは言っていられないですから。最低限のマナーですが、実はこれは相手のことを想像すれば、自然にできるはずですよね。
 たしかにコンテンツや内容は大事。でも、最低限のことができていなければ、やっぱり見てもらえないし、伝わらない、というのは事実。さすがの隠れコンセプトですね。

後半は7月12日更新予定です。

「伝え方が9割」バックナンバー

第1回 無理めな、あの人に デートOKをもらうコトバとは??

第2回 チカン多発地域!ある看板をつけたら チカンが発生しなくなった、そのコトバとは??

第3回 困った自転車放置!ある看板をつけたら放置がなくなる、そのコトバとは?

第4回 子どもが言っても勉強しない!言い方を変えたら、勉強をはじめたそのコトバとは?

第5回 いままで伝えることが苦手だった人のほうが、この方法で劇的に人生が変わる【本田直之×佐々木圭一】(前編)

第6回 伝える技術って、相手のことを想像する技術でもあるんです。【本田直之×佐々木圭一】(後編)

第7回 「相手のことを想像して伝える」それが、この本に書いてあるすべて【姜尚中×佐々木圭一】(前編)

第8回「心」という小説を書くことで、亡くなった息子に近づきたかった【姜尚中×佐々木圭一】(後編)

第9回 なぜDJポリスの伝え方が、群集を動かしたのか?そこに使われていた「伝え方のレシピ」。

第10回 DJポリスが伝え方で使った「チームワーク化」。これを使えば動かない人も動く。


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◆岩田松雄氏『「君にまかせたい」と言われる部下になる51の考え方』

実は隠れコンセプトは<br />「相手のことを想像する技術」<br />【元スターバックスコーヒージャパンCEO・岩田松雄×コピーライター・佐々木圭一】(前編)

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上司が「引き上げたい」と思う部下になる方法。
 
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「上司への報・連・相の仕方がよくわからない」
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