大きな理由としては以下が挙げられます。

1.欧米への就職を希望するも、留学と違って就職はかなり難しい。
2.小さい頃から「TOYOTA」「SONY」「Panasonic」といった世界的ブランドの日本製品が、身のまわりに溢れていた。このため、今も日本企業には世界を代表する有力企業が多いというイメージがある。
3.治安がいい。
4.アジア諸国から地理的に近い。
5.母国に比べると給料もいい。

 まず1.に関して。弊社は日本留学促進事業も展開しているので実感しますが、海外学生のあいだで留学先としての日本の人気は明らかに落ち続けています。世界経済における日本の存在感が低下したために、10〜20年前と違って、わざわざ日本語を数年かけて学んだ後に日本の大学に入るメリットはなくなりました。弊社スタッフが、世界中の大学の日本語学科を行脚していると、「日本語を学びたいという学生が減り、中国語や韓国語を学ぶ学生が増えている」という話をよく耳にします。背景には、中国の場合は圧倒的な経済成長が、韓国の場合はK-POP人気があります。

 留学先としてはアメリカとイギリスが変わらず高い人気を誇っており、世界の最優秀層がこぞって向かいます。当然ながら、就職においても両国は圧倒的な人気があります。しかし、留学を経ずに海外から直接就職するチャンスはほとんどありません。アメリカ、イギリスともに、就労ビザの取得が大変難しいためです。そもそも外資系企業の多くは、本社で一括採用する概念がないため、良い人材は各国で現地採用していきます。

 日本はこの両国ほどは就労ビザの取得が難しくなく、日本本社が強大な機能と採用権限を有するために(外資系と違って、各国での現地採用もほとんど行っていない)、海を越えて優秀な学生を世界から獲得するには大変有利なのです。アメリカやイギリスに対して留学生獲得では分がありませんでしたが、就活生獲得のライバルは両国ではなく、シンガポールや香港になってきます。

 また、2.に関しても、学生たちがよく口にします。今の大学生たちが小さかった頃は、まだサムスンやグーグル、アップルも台頭しておらず、日本の電機・自動車メーカーが世界で大きな存在感を放っていました。我々が感じている以上に、彼らは日本ブランドへの信頼や憧れを、今も感じてくれています(ただし、5年後、10年後は残念ながら今のようには行かないでしょう。)

 3.治安と4.地理におけるメリットは、いずれも親が海外就職について納得するうえで大きな後押しとなります。アジアの学生たちは就職先を決めるのに、親の意見にかなり左右される傾向があり、自分の意思だけでは決めません。

 最後に5.の給与面ですが、新興国の現地平均給与に比べると、日本企業の初任給はまだかなり高いといえます。賃金レベルが上がってきた中国でさえも、一部の外資系や国営企業を除けば、初任給で月収10万円を越えるケースは珍しいといえます。ASEAN諸国でも、シンガポールを除けば、月収3~5万円以下の国が多いのです。つまり、月収20~50万円のオファーを出す日本企業に就職することは、所得の面でも大きなメリットがあります。