「医師の反発を受けたくはない。どう公表すべきか。社内でも議論を尽くして悩んだ」──。ある製薬会社の幹部は苦悩の表情で語る。
製薬業界から医療機関や医師に支払われた研究費や講演会の謝礼、接遇費などの情報開示をめぐる問題。医師会の猛反対などを受けて、「固有名詞の公表は1年先送りする」ことで折り合ったが、8月20日現在、自社ホームページで公表された十数社の情報(2012年度分)を見ると開示に対する消極姿勢が逆に浮き彫りになっている。
とりわけ腰が引けているのが国内上場企業である。十数社のうち、武田薬品工業、中外製薬、エーザイのわずか3社にとどまっており、7月17日に米ファイザーが先陣を切った外資系とは対照的だ。
公開の仕方を見るとさらに問題が多い。ホームページ上での該当部分は探し出しにくくなっている上に、アクセスしても、「むやみに公開しない」などといった条件を課し、心理的なハードルを設けている。加えて、大半はダウンロードや印刷をできなくするなど何重もの制限を設けている。
特に武田については、インターネットの閲覧ソフトによっては、最新バージョンでも閲覧が不可能、あるいは非常に見にくい状態となっているなど極めて不親切。武田は本誌取材に対し、「今後、修正する」と回答したものの、やろうと思えばすぐにでもできるだけに、意図的と疑われても仕方がない。
ある大手製薬会社幹部は、「インターネットなどでの興味本位な投稿や誹謗中傷などを防止する目的がある」と弁護するが、開示をしている以上、逆効果になるのは否めない。製薬業界が配慮したはずの医師からも、「仕方なく公表している姿勢があまりにも見え見え」「医療界に対し、後ろ向きのイメージを与えかねない」という懸念の声が上がるほどだ。