生活保護法改正案・生活困窮者自立支援法案の
何が問題なのか?

 今回提出された生活保護法改正案・生活困窮者自立支援法案には、数多くの問題点が含まれている。最大の問題点は、生活保護の申請権が保障されなくなるということだ。生活保護法改正案を見てみよう。

第24条:
「保護の開始の申請は(略)申請書を保護の実施機関に提出しなければならない。 ただし、当該申請書を作成することができない特別の事情があるときは、この限りではない。」

第24条2項
「前項の申請書には(略)厚生労働省令で定める書類を添付しなければならない。ただし、当該書類を添付することができない特別の事情があるときは、この限りではない。」

「……特別の事情があるときは、この限りではない。」とはあるけれども、その「特別の事情」の有無を誰がどう判断するというのだろうか。「申請書を渡さず、申請を行わせない」「書類不足を理由として申請を受け付けない」は、現在でも、福祉事務所の窓口で生活保護を申請させないために行われる「水際作戦」で多く用いられる手段である。「現在は違法とされているこれらの対応を合法化するための法改正」と解釈しないでいることは難しい。

 生活困窮者自立支援法案に対しては、日本にほとんど存在しない「第二のセーフティネット(雇用と扶助の間にあるべきセーフティネット)」の法制度化として評価することも可能である。しかし、今回の生活保護法改正案とセットとなった時には、ただ単に

「困窮者を福祉事務所に来させないための防波堤」

 として機能する可能性は少なくないだろう。筆者はそのように考えている。

 では、生活保護法改正案・生活困窮者自立支援法案が組み合わせられると、どのようなことが起こりうるか。さいきまこ氏のイラストをご参照いただきたい。

漫画家・さいきまこ氏による、生活保護法改正案・生活困窮者自立支援法案。このように運用される可能性が高いことを忘れずに、メディア報道や政府答弁に接したい。

参考:さいきまこ氏のインタビュー記事
 「読めば貧困・生活保護が他人事ではなくなる!?マンガで生活保護を描く、さいきまこ氏の思い」

ジャーナリスト・池上正樹氏の近著「ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護」(ポプラ新書)。 長年引きこもっていた人々が自分の人生を再度歩みはじめるにあたって、生活保護がどれほど有効かつ唯一の手段であるのか、具体的な事例に即して語られている

 現在、生活保護の申請は、申請書を提出することによって行える。福祉事務所を訪れることが困難であれば、郵送によってもよい。「申請書を渡さない」という対応は、前述したとおり、生活保護の申請をさせないために広く行われているが、申請書を自分で用意すればよいのである。フォーマットに特に定めはなく、レポート用紙に同様の事項をメモ書きしたものでもよい。

 なお、福祉事務所で渡される申請書と同等の申請書は、「もやい」のサイトでダウンロードすることができる。預金通帳・賃貸契約書など必要な書類が揃っていることは、現在、申請の必須条件ではない。だから、着の身着のままで逃げてきた災害被災者・DV被害者等が生活保護を申請できるのである。生活保護法改正案が成立すると、このようなケースで申請を可能にする対応が「特例」扱いとなりかねない。政府は「これまでと対応は変わらない」としているが、本当にそうであれば、そもそも法改正の必要性がないのである。