「不正受給」「福祉への依存」「不公平」を
生活保護法改正案は解決できるか

 とはいうものの、現在の生活保護制度には数多くの問題がある。筆者の考える最大の問題は、

・捕捉率(困窮者のうち生活保護を利用している人々の比率)の低さ(日本では多めに見積もっても30%程度)
・生活保護基準が「健康で文化的な最低限度の生活」に足りていないこと

 の2点であるが、一般的に認識されている問題点は「不正受給が多い」「生活保護という制度があるから甘えて働かない」「一般低所得世帯との不公平感」の3点であろう。

 不正受給は、過去も現在も決して多いとはいえず、金額で0.5%程度である。近年、不正受給の摘発は強化され続けており、件数は増加しているけれども、一件あたりの金額は減少する傾向にある。さらに「不正受給」とされているケースの中では「収入申告の義務を説明されていなかった高校生が、アルバイト代を申告していなかった」というものが多く見られるようになってきている。このようなケースでは、単に受け取りすぎた保護費を返還させれば済む。コミュニケーション不足・説明不足によって発生する「不正受給」は、厳罰化すれば解決するというわけではないだろう。最初から保護費詐取が目的であった事例・福祉事務所に再三指導されているにもかかわらず繰り返される事例などに対しては、現在と同様に、刑事告発も含めた対応を行えばよいだけの話である。

 生活保護法違反だけでは「厳罰」というほどのペナルティにはならないけれども、悪質で刑事告発が行われるケースでは刑法犯となり、その他の罪状にも問われる可能性が高い。その場合の取り扱いも、現行の生活保護法に規定されている。悪質なら刑法犯になるのだから、生活保護法自体の厳罰化は必要ないのではないだろうか?

第八十五条 不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。ただし、刑法(明治四十年法律第四十五号)に正条があるときは、刑法による。

 筆者自身は、今回検討される厳罰化に対し、

「説明を受けていなかった高校生などに対しても厳罰を適用することにより、国民全体に恐怖感を与え、支配しやすくすることが目的なのではないか?」

 という危惧を抱いている。昨今の政治の動きに対しては、「下衆の勘ぐり」と言われようが、どれだけ怖れても「怖れすぎ」にはならないと考えている。