【技術3】ねぎま式読書ノートのつくり方
マーキングが終わったら、一旦その本を机の隅にでも積んでおいて、時間ができたときに読書ノートをつくります。読書ノートに入れておきたい最低限の情報は、次の3点です。
・書いた日付
・本のタイトル
・著者名
この3つさえあれば、「このころにこういう本を読んだ」ということは残しておくことができます。ノートに記録するクセがついていない人は、まず最低限、この3点を書き残しておくことから始めてみてください。
「もっと書きたい」「読書体験を深めたい」という人には、「ねぎま式読書ノート」がおすすめです。これは、「これだけは」という良書を読んだ体験をしっかり残しておくために僕が考えたやり方です。
上記の3点に加えて、次の2点を記録しておきます。
・自分にとって重要な記述(抜き書き)
・その文章に対しての自分の感想(コメント)
では、実際に読書ノートをつくってみましょう。通常のメモ書きと同じように、6桁の日付ラベル(「131127」など)を入れて、大きな字ではっきりと書きます。たとえば、行間はノートの罫線1つ、項目間は罫線2つというふうに余裕を持たせておくとあとで読みやすく、文字の挿入や訂正もやりやすいでしょう。
次は、抜き書きとコメントです。まず、ペンでマーキングしておいた箇所のうち、もう一度読んでも「いいな」と思うところだけを厳選します。この時点で5、6回は読んでいることになるので、数はそれほど多くないはずです。
続いて、その文章を抜き書きし、間隔を置いて、コメントを書いておく。「ねぎま式読書ノート」と名づけたのは、この「抜き書き」と「コメント」の並びに特徴があるからです。
抜き書きには「○」、感想や補足説明などの自分の言葉には「☆」をそれぞれ行頭記号として付け、交互に書いていきます。焼き鳥の「ねぎま焼き」のように、「抜き書き」と「コメント」が一つ置きに出てくることからネーミングしました。実際のノートから、「ねぎま式読書ノート」を引用すると、次のようになっています。
○中国は2002年までエイズ問題を否定していたが、ある日、エイズ感染者統計を改訂した。それまで3万人とされていたHIV感染者が、一夜にして100万人になったのだ。(P180)
☆売血で広まった中国。恐ろしい。日本の統計は正しいのだろうか?
○自殺者の3分の2は、決行時に欝である。(P189)
☆世界中の武力紛争での死者より多い、と著者。戦争でも平和でも死ぬ。人間って大変だな。
○もちろん奴隷という立場は人権を剥奪されたものだったが、まだしも人間的に扱われた。腹をすかせていたり病気であれば、働けないからだ。しかし現代では、奴隷は使い捨ての財産として、安く売り買いされている。(P231)
☆昔の奴隷は長期雇用。今の奴隷は借金のカタに人身売買。後腐れなくコキ使える派遣や日雇いもやばい。必要なのは人権より金か。
「○」から始まるのが本の抜き書き。要約はせずそのまま引用しています。「☆」から始まる文は自分のコメントです。直前の引用に対する感想や思考メモ、補足説明になっています。
引用の文頭には「○」を使って、自分の言葉と著者の言葉の区別は明確にしておきましょう。こうしておかないと、あとで読み返したとき、抜き書きなのか自分のコメントなのかわからなくなってしまいます。
抜き書きとコメントを交互に書く理由は、書き写した印象が鮮明なうちに、感想を書きたいからです。何箇所も抜き書きを済ませてから、前から順にコメントをつけようと思っても、何を考えていたのかを忘れてしまうでしょう。そうではなく、数学の問題を一つ解くたびに答え合わせをやるように、すぐに自分の思考をかたちにしておくわけです。
感想は、凝ったことを書こうとする必要はありません。「すごい!」とか「えー!」とかでもいいでしょう。気の利いたことを書こうとして、筆が重くなることだけは避けなければなりません。
心がけとしては「自分にとって重要な文章」「主観的なコメント」を書いておくことです。客観的に重要であっても、自分の感性に響かない情報は、あとで読み返しても、何も思わないからです。
さて、この「ねぎま式読書ノート」はあくまで良書を読んだ記録をじっくり書きたいときの基本形です。見ての通り、それなりに時間もかかるので、すべての本でこれをやっているわけではありません。実際には次のように、本に応じてやり方を変えています。
たとえば、「ファイリングのコツ」のような純粋な実用書の場合は、抜き書きでなく、「☆」マークで要点だけを書き残しておく。エンターテインメント小説などの場合は、1冊を通じての感想だけを箇条書きでつける。繰り返しになりますが、無理のない範囲で続けることが大事です。
だから面倒なときには、「ねぎま式」の抜き書きとコメントを一セットで終わりにしてもいいし、それさえ面倒なときは書誌データ、つまり「タイトル」「著者」「出版社」だけをノートに書いて終わりでもいい。これだけでも「この時期にこの本を読んだ」という読書体験が目に見えるかたちで残せます。
読書ノートはきっちり残しておきたいけれど、作業時間が取れない。そんな場合は、中断して作業を何回かに分けても大丈夫です。「これは運命の1冊だ」という本に出会ったら、「ねぎま式読書ノート」でじっくりと記録を残してみましょう。きっと忘れられない体験になります。