グローバル化は善し悪しではなく、現実
河合 以前にお話しした際に、健康診断のような形で社員全員に英語のテストを受けさせることを始めたとおっしゃっていましたよね?
斎藤 今年で6年目くらいですかね。入社前は内定時、入社後は、15年目まで毎年、必ず1回TOEICの受験を必須にしています。
河合 成果はいかがですか?
斎藤 平均点は毎年上昇しています。とくに、入社時のTOEICの点数は、ここ数年ものすごい勢いで上がっています。商社のように業務上英語が必須ではありませんけども、当社に新卒で入社する社員の多くは留学の経験があるようです。期間を問わず「私、大学時代に留学していました」という新入社員が多いようですね。
河合 今年の夏、フランスにいたときに現地の大学生と話しをしていたんですけれども、欧州危機の影響でフランスは就職難を迎えています。すると、留学経験のない人はまず会社が採ってくれない、会ってくれないという事態みたいです。就職のためだけに留学するわけではないと思いますが、フランス人でも、英語やスペイン語でレベル5の実力を持ってないと、就職はできない状況だと言っていました。
斎藤 フランスの話で思い出しました。「官民交流塾」という次世代のリーダー育成を目的とした手弁当形式の塾を、官僚OBの方と大学教授の方と私の3人で開いています。官僚OBの方が若手官僚を6人程度集めてくれて、私は民間企業の若手を6人ほど集めて、2ヵ月に1回のペースで開催しています。毎回午後6時過ぎから3、4時間、遅いときは午後10時近くまで喧々諤々議論をします。
そこでは、官僚側から1人、民間企業側から1人、各々が抱える問題や課題についてプレゼンテーションをした後に、全員で議論をします。時折、ゲストスピーカーをお招きしていますが、約1年前にジョージ・オルコットさんという、当時、東京大学先端科学技術研究センターで特任教授をされている方にお話いただいたとき、私たちみんなが頭を抱えてしまいました。
フランスにサンゴバンという会社がありますが、ご存じですか?
河合 世界的なガラスメーカーですね。
斎藤 そう。その会社のウェブサイトを見ると、採用、リクルートのページは英語だけで、フランス語が存在しないと。フランス語と英語の併記ではないんですよ、英語だけです。
そのとき、塾生の一人がやや挑戦的に「なぜグローバル化をしなければいけないのか?」という趣旨の質問をしました。さすがにオルコットさんも少し考えた結果、彼が発した言葉は「いや、グローバル化というのは善し悪しではなくて、現実なのです」と。
河合 そう、おっしゃるとおりです。避けられない現実だと思います。最近は「グローバル化」や「グローバル人材」という言葉がよく取り上げられていますが、まだ討論をしている段階のようです。
私は、若い人に夢を持って、もっと海外で活躍してほしいというメッセージを本に書きました。日本でも、海外でも、自由に仕事ができる自信をつけてほしいと思います。英語力を身につけて、専門性を磨き、人間力を大学で身につければ、きっと世界に羽ばたくことができるでしょう。教育者としては、少しでもそういった人を育ていきたいと考えています。
次回更新は1月10日(金)を予定。
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