技術とともに取り込むべきイスラエルの「グローバルリーチ力」

 中国以外にも、米国を筆頭に、歴史的に繋がりの深いロシアやフランス、イギリス、インド、韓国等、イスラエルと政府レベルからオープンイノベーションを積極的に推進する国は数多い。その活動は、イスラエルの技術力・知財の取り込みに留まらず、イスラエルの「グローバルリーチ力」をテコにした第三国への事業展開が視野に入れられている。

 そもそもイスラエルには、人口の2倍近くある「ユダヤ人ネットワーク」が南北アメリカ、欧州、アフリカはじめ広く世界中に存在する。古くはロスチャイルド家に通じ、欧州が世界の覇権を握ったパックスブリタニカを形成するための国際的な貿易決済ネットワークをユダヤ人が担っていたと伝えられる。

 現代に入ってからは、今も500万人超のユダヤ人が住む米国との結びつきが特に強く、80年代前後から盛んになり始めた米国西海岸で学んだ技術者・科学者のテルアビブやハイファへの還流により、いわゆる”アルゴノーツ”(注)がグローバルな頭脳還流ネットワークをイスラエルに形成してきた。

 更には、全米ロビー団体の中でも最強のパワーを有すると名高い親イスラエルロビー団体「アメリカ・イスラエル公共問題委員会(AIPAC)」によって、米国を介してグローバルにインパクトを与えるルール形成パワーも長年に渡って蓄積してきているのだ。

注:ハイリスク・ハイリターンをとり世界各国からシリコンバレーに挑み母国に戻って更に発展させることでグローバルに頭脳ネットワークを構築する現代のハイテク企業家たちを、ギリシア神話でイアソンと共に黄金の羊毛を求めて大海に漕ぎ出したアルゴ船隊員たちの姿に重ね合わせた言葉。出所:“The New Argonauts: Regional Advantage in a Global Economy”, AnnaLee Saxenian, Harvard University Press, 2006