意外に知られていないのが、イスラエルがITやバイオといったいわゆるハイテク領域だけでなく、水処理や農業といった1次産業技術においても世界的な競争力を有している点だ。実際中国は、自国の深刻な水不足と将来的な食料不足の課題解決パートナーとしてもイスラエルを頼りにしている。

 イスラエルは世界最大級かつコスト最低水準の海水淡水化プラントを自国内に有し、イスラエルの家庭用水の6-7割を淡水化でまかなううえ、世界でぶっちぎりの下水リサイクル率(80%程度)を誇る。農業においても圧倒的な節水システムをほこる“点滴灌漑”がほぼ全ての農場に普及している。このような先端技術を有するイスラエル企業を中国は着々と自国に迎え入れているのだ。

 更に中国は、イスラエルから得た技術をテコに、アフリカ地域等、新興市場に対して、従来の単なる資金と労働力の提供に加えて、過酷な環境下で競争力のある1次産業技術までをも提供し、成長市場での圧倒的な競争優位を構築することも狙っているのである。

 日本企業がイスラエルとの連携に逡巡する間にも、中国はイスラエルをテコに、ハイテクから水・農業に至る広範な領域に渡る技術力でも、新興市場への浸透力でも、日本に対して優位な状況を着々と創ってきているのだ。