イスラエル企業の多くは、自国市場が限られていることもあり、はじめからグローバル市場を視野に入れ技術開発を進めるとともに、歴史的に築かれてきたグローバルネットワークを活用して、米国や中国、アフリカなど世界中で優位に事業展開を進めるケイパビリティとマインドセットをはじめから有している。

 近年日本企業によるイスラエル企業へのM&A事例等が出始めているが、単なる出資や技術情報取得に留まっていてはイスラエルのポテンシャルを最大限に活用できない。イスラエルが有するグローバルなネットワークを最大限活用するためにも、実際にイスラエル内にオープンイノベーション拠点を構えて、当該拠点を軸として、イスラエルが有するイノベーティブな活力を現地で取り込みながら、グローバル市場へ向けた新事業創造を仕掛けていくことが求められる。

動き出す日本-イスラエルでの産業レベルのオープンイノベーション

 最後に、日本とイスラエルの連携促進に向けて、デロイトが実際にイノベーションの“加速支援役”として取り組んでいる例のうち、特にハイテク領域ではなく日本のトラディショナルな海事産業(造船産業等)が関わる「洋上淡水化事業」について簡単に触れよう。

 これは、先にも紹介したイスラエルの先端的な淡水化技術を日本の海事産業と組み合わせることで新たなビジネスモデルを産みだし、イスラエルのグローバルネットワークと日本のファイナンス力をテコに、世界の水不足地域へ向けて事業展開を仕掛けていくことを狙うものである。既にイスラエル側・日本側双方で水面下での取り組みが始まっている。

 水不足は世界的にも深刻であり、2025年には、中国、インド、中東、北アフリカのほか、オーストラリアや北米(カリフォルニア等の西海岸やフロリダ等)でも深刻な地下水の枯渇が広がる。既に一部地域では、水道料金の高騰や水を大量に使用する工場の移転運動も起こっている。これに対する課題解決策として海水淡水化市場の高成長が見込まれているのはご承知の通りである。