経営再建中の日本航空(JAL)は日本郵船と航空貨物事業の統合について協議を開始した。これに続いて水面下で進んでいるのが旅客事業でのパートナー探し。大型融資を獲得するために必要な再建計画策定の期限が迫り、“スピード婚”を目指すJALの動きに航空業界は揺れている。再建ははたして間に合うのか。

 「JALの件、なんとか頼みます」

 今春以降、国土交通省幹部たちは政府や金融機関はもちろん、日本航空(JAL)との交渉案件を抱える企業の幹部たちに支援を訴え続けてきた。貨物事業の“結婚相手”として候補に挙がる日本郵船に対しても同様だった。

 8月21日、JALと郵船は、JALの航空貨物事業と郵船の航空貨物子会社である日本貨物航空(NCA)について、2010年四月の統合を目指して協議を開始すると発表した。JAL再建策が議論されている最中での統合協議の公表。当事者たちは一様に口を閉ざすが、明らかに国交省に背中を押されている。両社が交渉の席に着き、JAL再建計画の一つとしてお披露目された格好だ。

初年度黒字が条件
統合に慎重な郵船

 ただ、この統合交渉が最終的にまとまる可能性は「よくて五分五分、正直それ以下ではないか」と郵船周辺にはシビアな声が多い。郵船首脳は「われわれが救済するなんてとんでもない」と困惑し、「統合にメリットがあるのか、厳格に見極める」と慎重な姿勢を崩さない。

 実際、協議を開始する前提条件として郵船はJALに対し、互いに負の資産を統合会社に持ち込まず、初年度から黒字にすることを要求した。

 具体的項目として、JALは8つもの労働組合を抱えて複雑化している労使問題、および売却損が出るような古い航空機材を持ち込まないこと。郵船もまた、NCAが抱える累積損失を統合前に処理することを覚悟している。

 両社は3月に一部路線で共同運航を開始し、徐々に事業統合の可能性を探り始めたが、郵船側が示した条件に対する意識確認で今日までの時間を要した。「実質的な交渉期間は年内いっぱい。JALの財務状況も審査し、難しいと判断すれば打ち切る」と郵船上層部は語る。

日本の航空貨物輸出重量

 国際航空貨物市場は世界同時不況の影響をもろに受けて需要が急減し、上のグラフのとおり、日本発着の航空貨物市場も大打撃を受けた。重量ベースだけでなく、単価も大幅に下落している。