海外で通用するのは、
語学力より「考えて行動できる」人!

桜井 そういった幹部の登用・育成システムは、海外事業の適材適所を見極めるうえでも強みを発揮しそうですね。今や、無印良品は世界的にも「MUJI」として広く浸透していますし。

松井 そうなんです。約10年前から海外展開を強化してきたなかで、有効に活用できました。

 当初、海外に送る人材は、もっぱら語学力を重視して選んでいたのです。しかし、語学力より、自分で考えて行動できることのほうがずっと重要だとわかって、今は人選が変わりました。現在、当社の海外売り上げ比率は2割強にすぎませんが、海外拠点には30代後半を中心に優秀な人材を積極的に登用しています。そのぐらいの年齢で半年〜1年も現地で過ごせば、言葉なんてみな話せるようになります(笑)。

ビジネスの仕組みを変えれば働く人の意識が変わる!<br />「獺祭」が学ぶ、無印流“意識改革”の神髄旭酒造の桜井博志社長  撮影:住友一俊

桜井 私たちもかねてグローバルに販路を拡大してきまして、今秋にはパリで<獺祭>のレストラン&ショップを出す予定です。そこの常駐担当者も、英語やフランス語はまったく話せないのですが、何があってもヘコたれなさそう、という基準で選びました(笑)。

松井 本当にそれがいいですよ。海外では思うように運ばないことばかりですから、いちいち本社にお伺いをたてたり、失敗して思考停止したりせず、自分で考えて行動できる人でなければ務まりません。でも、そうした修羅場経験があとで役に立つんですね。

 今では、課長クラスは全員に海外を経験させるため、毎年20人、3ヵ月ずつ送り込んでいます。そうすると、海外での大変さをみな垣間見ますから、戻ってから海外拠点の注文や問い合わせがあったときに、相手の立場に立って迅速に対応することにもつながります。また、海外で採用した幹部も、必ず日本にきて、店舗研修などにも出てもらいます。職能別採用が当たり前の海外だと、幹部は「なんで私が店舗なんかに…」と考えがちですが、日本の店舗運営はもちろん本社のポリシーや意思決定の仕組みに触れることで理解を深めてくれます。

桜井 お互いに国内・海外でそれぞれの状況は想像がつきませんから、それは有効な取り組みですね。私たちには<獺祭>というひとつの商品しかありませんので、とにかくそれを全社一丸となって、世界中のみなさんに紹介していきたいと思っています。

松井 ひとつの商品が世界のマーケットの広範囲で通用する−−−。それはとてつもなく大きな強みですよ。海外で、いろいろな要望も寄せられるでしょうが、まずは出てみて反応を見てみないとわかりませんよね。でも、根本を変えると失敗するので、ぜひ突き進んでもらいたいです(笑)。