桜井 以前、香港に出ようとしたときも、広東語では<獺祭>という漢字が読めないから名前を変えろ、とか、味がさらっとしすぎているから香港人好みに変えろ、などと言われたため、取引はお断りして、その結果、香港への展開が2年ぐらい遅れたこともあるのですが(苦笑)。でも、仰るとおりだと思います。

売れなくなって自信を失うと
「お客様の声を聞こう」運動が始まる

松井 あと、私たちの経験でいえば、売れなくなって自信がなくなってくると、「お客様の意見を聞こう」とし始めるんです。「もっと色味の展開が多いほうが面白いのではないか」と言われて、ポリシーを曲げて色展開を増やしたりしたこともありました。でも、一瞬売れただけでした。そういうふうに揺れ動いたらダメなんですね。

 ですから、ブランドイメージを決めて守る仕組みも、いろいろ考えてきました。今でも「デザインした人の名前は出さない」「宣伝に有名人を起用しない」「体型に合わせて型紙は変えても、商品企画は日本で行う」等々です。さきほどの色の話で言えば、使ってよい色は250種と型番で決めていて、素材によって発色が変わっていないか、出来上がった商品はすべて商品部がチェックするほど細心の注意をはらっています。

桜井 そこも仕組みで決めておられるんですね。今のところ、私たちは不器用な会社であることが幸いして目先を少し変えた商品などは一切造っていませんが、将来的にブランドを守るためのルールは決めていったほうがいいのかもしれません。今回、広範囲にいろいろ伺えて、大変勉強になりました。ありがとうございました。

松井 パリのお店の開店、楽しみにしています!

 

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