昨年12月の全国消費者物価指数(除く生鮮食品)は、前年同月比プラス0.8%となり3ヵ月連続で上昇傾向を示した。この背景には、原油や小麦などの価格上昇に伴い、石油関連や食料品の価格が上昇トレンドを鮮明化したことがある。
その一方で、ノート型パソコンなどの耐久消費財の価格の下落は続いており、“モノ”の値段には明らかな二極分化の傾向が見られる。そのため、消費者物価全体の動きを見て、「既にデフレから脱却した」と判断するのは尚早だろう。
原油・穀物価格上昇による
コストプッシュ
物価の中身を少し詳細に見ると、ガソリンなどの自動車関連費が5.3%上がったことに加えて、灯油などの光熱費が24.0%上昇した。また、肉類や食料品なども徐々に上昇傾向を鮮明化している。中国やインドなど新興国の高成長によって、エネルギーや穀物などに対する需要が世界的に拡大し、それが商品市況の価格を押し上げている。それと同時に、潤沢な資金の一部が投資資金となって商品市況に流入し、原油などの価格を上昇させる要因の1つになっている。
原油や穀物などの原材料の高騰によって企業の生産コストが上昇し、一部の企業は、コスト上昇分を価格に転嫁するために、石油関連商品や食料品などの価格が上昇トレンドを示していると考えると分かり易い。そうした状況を、経済学の定義ではコストプッシュ型インフレと称する。
一方、競争が激化しているパソコンなどの耐久消費財の分野では、むしろ価格は下落傾向を示している。家庭用耐久財は前年同月比でマイナス5.5%、通信費も同2.2%と下げ基調が明確になっている。中でも、薄型テレビやノート型パソコンの価格の下がり方は顕著だ。
つまり、石油・穀物などに関連する商品の価格上昇が顕著なため、「物価全体は上昇傾向を示しているものの、競争激化などで価格が下落する耐久財も多い」という構図が浮かび上がってくる。
生活物資の
価格上昇は続く
足元の物価の動きを見ると、食料品やガソリン、灯油など生活必需品の価格の上昇が大きいことが問題だ。それは、我々の生活を苦しくする可能性が高いからだ。小麦を原料とするパンや麺類は、殆ど毎日のように買うことになる。また、冬の寒い時期、特に寒冷地では、値段が上がったからと言って、暖房用の灯油を買わないというわけにはいかない。せめて、暖房を節約する程度しか防衛策はないだろう。これらの生活必需品の価格上昇は、我々の日常生活には大きく響く要因の1つだ。