なぜ「ミスリーディング」なのか?

 では、山田氏はなぜ「ミスリーディング」と指摘したのか。先の発言にもあったとおり、まず「平均値と上限値を比較している」というところに問題がある。

 住宅扶助の上限値は、あくまで上限値である。生活保護利用者の居住している住宅の家賃は、基本的には上限値以下のどこかに分布する。それを平均すれば、家賃実態の平均値が出てくる。その平均値は、上限値に近くなる傾向はあるかもしれないが、上限値そのものであるわけはない。

 ただ、生活保護世帯の家賃実態の平均値は、一般低所得世帯の家賃実態の平均値と比較すれば若干高くなる可能性がある。一般低所得世帯には、生活保護基準以下で生活している人々、すなわち憲法第25条でいう「健康で文化的な最低限度の生活」を行う権利を保障されていない人々が含まれている。その人々の、いわば住の人権が保証されていない住居も含めて比較すれば、住の人権が保証された生活保護世帯の家賃実態より低くなるのは当然だ。

 ちなみに東京都の場合、単身健常者に対する住宅扶助額の上限は、5万3700円である。これはあくまでも「上限」額である。実際には、「これ以下の家賃で、生活保護利用者が利用可能な物件を見つけることができなかった」などの理由で、この上限を若干上回る家賃の物件に居住している生活保護利用者も多い。差額は生活扶助から支払われることになる。

 ちなみに車椅子を必要とする障害者等に対しては、1.3倍の特例基準が認められる場合がある。実際には1.3倍、つまり約7万円では、そのような障害者が実際に住むことのできる民間賃貸住宅を見つけることは非常に困難だ。車椅子の動線が確保できるスペース、2階以上であればエレベータ、通勤を行うのであれば最寄り駅からそれほど遠くないことが必須となるからだ。このような理由により、生活保護を利用している障害者は、家賃7万円以上の物件に居住していることが多い。もちろん、差額は生活扶助から持ちだして支払っているのである。

 とはいえ、山田氏が生活保護世帯の「住」の実態にどれほど通じているのか、筆者はまったく知らない。

生活保護利用者の家賃実態が高いのはなぜ?
「健康で文化的な最低限度の住」をどう考えるか

 山田氏は、続けて、

「基本方針として、住宅扶助はミニマム(筆者注:ナショナル・ミニマム。国が定める最低生活ライン)の具現化です。低所得層の平均家賃を参照するのは問題があります。ミニマムを満たした中での家賃分布を見ていく必要があります」

 と発言した。生活保護基準以下の生活をしている低所得層との比較で生活保護基準を評価してはならない、ということだ。

 また山田氏は、住宅のハードウェアとしての部分に関しては、総務省の住宅土地統計調査を「ミニマムを満たしているかどうかから見てほしい」、家主等による住宅関連サービスの部分については「方法をどこかから持ってくる必要がある」と発言した。

「生活保護費は国庫に対する負担となっているんだから、余計なサービスは削ってよいのでは」

 という意見もあるかもしれない。しかし住の安全・「住むこと」の安全は、本人だけではなく、周囲の人々の安全にも関わっている。

 2014年2月4日、福岡市で85歳の男性が暖を取ろうとしてコタツの中でカセットコンロに点火し、居住するアパート一棟を全焼する火災があった。男性は生活保護を利用していた。幸いにも死者はなかった。