日本では無名に近かった「アドラー心理学」を分かりやすく解説し、いまや世界累計部数1000万部を突破する大ベスト&ロングセラーとなった『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』。生きていく上で誰もが直面する対人関係の悩みに対し、「アドラー心理学」の教えが明確な答えを与え、共感を得ていることが世界中に支持を広げている最大の理由でしょう。
この連載では、『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』の著者である岸見一郎氏と古賀史健氏が、そうしたアドラー心理学の教えに基づいて、皆さんから寄せられたさまざまな悩みにお答えします。
今回は、SNSにおける友人の反応に悩む女性からのご相談。岸見氏と古賀氏がアドラー心理学流でズバリ回答します。(こちらは2014年6月30日付け記事を改題・再構成したものです)

「嫌われる勇気」「幸せになる勇気」の著者・岸見一郎氏と古賀史健氏がアドラー心理学の教えに基づいて、あらゆる人生相談に答えます。イラスト:羽賀翔一

今回のご相談

「SNSで私にだけ返信が遅く淡泊な友人。寂しいけど仕方ない……と頭では理解しているのですが、感情が追いつきません。」

 友だちがたくさんいる人気者の友人Aさん。そんなAさんに、私がTwitterやFacebookでメッセージを送っても、返信は遅く内容もとても淡泊です。しかし、その他の友だちとは頻繁にメッセージを交わして盛りあがっているようなんです。

『嫌われる勇気』を読んで、その人と話したい、仲良くなりたいと思うのはあくまでも「私の課題」だと学びました。そして、その友人Aさんが私と仲良く話すかどうか、というのは「Aさんの課題」であり、私がどうにかできるものではない、ということも学びました。

 しかしそう理解してはいても、どうしても感情が追い付きません。寂しいな、もっと話してほしいなと、Aさんの友人たちがうらやましく嫉妬を覚えてしまいます。感情を割り切るには、どうしたらよいでしょうか?(20代の女性より)

「アドラー心理学流」回答

●残念ながら、他者は「あなたの期待」を満たすために生きているのではありません。

 あなたは、アドラーの考え方は頭では理解できるが、感情面では追いつかない部分があるとおっしゃいます。でもそれは、「追いつかない」のではなく、「追いつかせてはいけない」と思っているのではありませんか?

 なぜなら、もし感情が追いついてしまったら、頭で理解していることをすべて認めないといけなくなるからです。

 アドラーの考え方は非常に厳しい一面を持っているので、受け入れないほうが楽な場合があるのも事実です。受け入れたくない気持ち、よくわかります。

 でも、本当にそれでいいのでしょうか。

 あなたは寂しいという感情に苦しんで、「変わりたい」と願っている。だとしたら「このままのわたし」でいいわけがない、前に進んでいかなければならない──。でも、やはり変われずにいて、アドラーの考え方を「受け入れたくない」と思ってしまうのは、寂しいというマイナスの感情に自分なりに折り合いを付けて生きていく“勇気”が足りていないからです。

 厳しいことを言いますが、あなたはけっして世界の中心にいるわけではありません。他者は「あなたのため」に生きているわけではないのです。だから、Aさんがあなたをかまってくれないというようなことは、ある意味あたりまえなのです。それを受け入れるしかありません。

 よく覚えておいてください。

 あなたは他者の期待を満たすために生きているのではないし、同時に、他者もあなたの期待を満たすために生きているのではないのです。

 一気にアドラーの考え方を受け入れるのは無理でも、まずは「この事実」を理解することから始めてはいかがでしょうか。

今回のアドラー流ポイント:他者はあなたの期待を満たすために生きているのではない

 アドラー心理学では、「課題の分離」という考え方を重視しています。その思想から出てくるキーフレーズが、「あなたは他者の期待を満たすために生きているのではない」と、その裏返しである「他者はあなたの期待を満たすために生きているのではない」という言葉です。もしあなたが何か対人関係で困難な状況に陥ったときは、常にこれらの言葉に立ち返って考えてみましょう。