

――インド市場も、スマートフォンをはじめとした3G(あるいは4G)のデータサービスが、今後はサービスの中心になっていくのでしょうか?
繁田 確かに、VAS(いわゆるiモード課金のようなサービス形態)の立ち上げに関しては、どの事業者も苦労しているように思います。これだけスマートフォン需要が拡張してくると、やはり「iモード的な課金サービスは別にいらないよね」ということになる。
――フィーチャーフォン(いわゆるガラケー)がないままにスマートフォン時代に突入したインドは、特にその傾向が顕著となりそうですね。
繁田 結果論ではありますが、「インドのARPUはまだ低いし、ユーザー数さえあればまだ伸びる」「だから高付加価値サービスを投入すればARPUは伸びる」というのが、いまとなっては希望的観測に過ぎた、ということなのかもしれません。
NTTドコモがインド市場への参入を目論んだ2008年頃は、まだまだ2Gの免許交付や3Gのスタート前で、期待感の大きな市場でした。しかしモバイル市場も、他の多くの消費財市場と同様に、低価格のマスと限られた高級市場という、二極化された市場構造となった。その時、高付加価値路線で勝負するのであれば、それに向けた戦略・戦術を取るべきですが、彼らはあくまで「マス」を狙い続けた。
――そうした二極化が進むインド市場において、情報通信分野での投資はどのように進めていくべきでしょうか?
繁田 日本企業として最初から「マス消費者」を攻めるような方向性で突っ走ることがいいことなのか?とは思います。
たとえばソフトバンクがBharti Airtelとモバイルコンテンツのジョイントベンチャーをやっています。このように通信インフラではない世界で攻める、これは一つ期待できるアプローチだと思います。
あとは、従来から言われることですが、通信インフラやネットワークなどのB2B領域で、収益回収を見ながら展開するというアプローチは、やはり有効なのではないでしょうか。
――二極化した市場のうち、上位層にアプローチする、ということですね。
繁田 モバイル市場に限らず、日系企業のインド進出に際しては「BOPマーケット」としての着眼に基づく取り組みが多かったと思います。しかし、そもそも(世界市場の感覚における)低価格商品を持たない日本企業が、BOP市場を当初から志すことには、大いなる課題があるのかもしれません。
そして各社を見ていて思うのは、将来性を過大に評価した過剰投資計画も、やはり危険だと言わざるを得ません。当たり前のことなんですが、やはり自分たちの得意とする価格帯や領域での勝負、それにあわせた投資計画を立てるべきなのではないでしょうか。