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スマートフォンの理想と現実

NTTドコモはなぜインドで失敗したのか

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第64回】 2014年7月2日
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インドもスマートフォンが広がる過渡期

――インド市場も、スマートフォンをはじめとした3G(あるいは4G)のデータサービスが、今後はサービスの中心になっていくのでしょうか?

繁田 確かに、VAS(いわゆるiモード課金のようなサービス形態)の立ち上げに関しては、どの事業者も苦労しているように思います。これだけスマートフォン需要が拡張してくると、やはり「iモード的な課金サービスは別にいらないよね」ということになる。

――フィーチャーフォン(いわゆるガラケー)がないままにスマートフォン時代に突入したインドは、特にその傾向が顕著となりそうですね。

繁田 結果論ではありますが、「インドのARPUはまだ低いし、ユーザー数さえあればまだ伸びる」「だから高付加価値サービスを投入すればARPUは伸びる」というのが、いまとなっては希望的観測に過ぎた、ということなのかもしれません。

 NTTドコモがインド市場への参入を目論んだ2008年頃は、まだまだ2Gの免許交付や3Gのスタート前で、期待感の大きな市場でした。しかしモバイル市場も、他の多くの消費財市場と同様に、低価格のマスと限られた高級市場という、二極化された市場構造となった。その時、高付加価値路線で勝負するのであれば、それに向けた戦略・戦術を取るべきですが、彼らはあくまで「マス」を狙い続けた。

日本企業の特性や商材を改めて見直せ

――そうした二極化が進むインド市場において、情報通信分野での投資はどのように進めていくべきでしょうか?

繁田 日本企業として最初から「マス消費者」を攻めるような方向性で突っ走ることがいいことなのか?とは思います。

 たとえばソフトバンクがBharti Airtelとモバイルコンテンツのジョイントベンチャーをやっています。このように通信インフラではない世界で攻める、これは一つ期待できるアプローチだと思います。

 あとは、従来から言われることですが、通信インフラやネットワークなどのB2B領域で、収益回収を見ながら展開するというアプローチは、やはり有効なのではないでしょうか。

――二極化した市場のうち、上位層にアプローチする、ということですね。

繁田 モバイル市場に限らず、日系企業のインド進出に際しては「BOPマーケット」としての着眼に基づく取り組みが多かったと思います。しかし、そもそも(世界市場の感覚における)低価格商品を持たない日本企業が、BOP市場を当初から志すことには、大いなる課題があるのかもしれません。

 そして各社を見ていて思うのは、将来性を過大に評価した過剰投資計画も、やはり危険だと言わざるを得ません。当たり前のことなんですが、やはり自分たちの得意とする価格帯や領域での勝負、それにあわせた投資計画を立てるべきなのではないでしょうか。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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