・株式で「仲間」を増やす

 もう1つの株式での資金調達の大きな特性は、株主が「仲間」になるということです。
 銀行からの融資等の負債は別名「他人資本」と呼ばれるように、あくまで「他人」からの資金調達です。銀行からの借入れは、もし仮にインケンな銀行の担当者に当たってしまったとしても、契約どおりに返済してしまえば、(または返済途中でも、借り換えることによって)その担当者と縁を切ることも可能です。

 しかし株式は違います。
株式は、一度株主に持ってもらうと、その株主を追い出すことは非常に難しいのです。

 ただの普通株式には「気に入らない株主には出ていってもらえる」という条件は付いていません。法律的には、契約や取得条項付きの種類株式で株式を返してもらう条件を付けることもできますが、経済的には難しい。なぜなら前述のように、株主というのは、会社が銀行その他の債権者に資金を返したあとにはじめて資金が返ってくるという大きなリスクを負っているので、会社がリスクが高いときに資金を出して、軌道に乗ってきたら追い出されるのでは、一般的には株主はたまったものではない(高いリスクに対して十分な見返りが期待できない)からです。

 株式で調達した資金は「自己資本」と呼ばれるとおり、株式を持っている株主は「身内(仲間)」なのです。つまり、株式は、単に「資金を調達する手段」ではなく、「仲間を増やす手段」でもありますし、逆に言えば「どういう仲間にどのくらい株式を渡すか」(資本政策)を考えなければいけないものでもあるのです。

 つまり、投資家が共通して求めるものは「儲け」ではあるのですが、エンジェル、金融機関系のVC、政府系VC、独立系VC、CVC*4、事業会社など、それぞれの投資家ごとに、利益以外に求めるものや、何をサポートしてくれるかは異なります。仲間となる人が何を求めているのかという「心」(インセンティブ)の問題を考える必要があるというのが、株式を使ったエクイティ・ファイナンスのもう1つの特徴です。

*4 Corporate Venture Capital=事業会社が運営するベンチャーキャピタル。


【新刊のお知らせ】

定価:本体3,600円+税
発行年月:2014年7月
A5並製、頁数:432
ISBN:978-4-478-02825-4

◆磯崎哲也 『起業のエクイティ・ファイナンス

2010年に発売されるや、ベンチャー関係者のバイブルとなった『起業のファイナンス』の続編。ベンチャーが活況を呈し、M&Aも一般的になった結果、起業をめぐるファイナンスも優先株式等を使った複雑なものになってきた。そうした実情に対応し、本書ではより専門的なエクイティ・ファイナンスの実務手続きを解説する。

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