税所流「革命」とは?
五大陸ドラゴン桜e-Education project代表
1989年生まれ。東京都足立区出身。早稲田大学教育学部3年生。19歳でバングラデシュに渡り、グラミン銀行の研究ラボ「GCC」で初の日本人コーディネーターになる。20歳で独立し、バングラデシュ初の映像授業を実施する「e-Educationプロジェクト」をスタート。現地の大学生パートナーと協力して貧困地域の高校生を国内最高峰ダッカ大学に入学させる。現在は仲間と共に、世界各地でこの方式を広めようと奮闘中。2012年にはヨルダン、ルワンダ、パレスチナ、フィリピンでの活動を開始。
◇主な著書
『前へ!前へ!前へ!』(木楽舎) 2011
『最高の教室を世界の果てまで届けよう』(飛鳥新社)
税所 はい、僕は、ソマリランドで革命を起こします。
白木 ソマリランドですか? アフリカの、ソマリアではなく?
税所 そうです。ソマリアから独立した未承認国家、ソマリランドです。僕は今まで世界中の高校生をターゲットにe-Educationの仕組みをつくってきましたが、ソマリランドでさらに大きな教育革命を起こすことにしたんです。
白木 というと?
税所 ソマリランドに大学院をつくります!
白木 ええっ。また、どうして大学院を?
税所 その前に、夏子さん、ソマリランドって本当に不思議で魅力的なところなんですよ。僕自身、早稲田の先輩である高野秀行さんが書かれた『謎の独立国家ソマリランド』という本を読んで知ったのですが……。
ソマリアは3つの地域によって構成されています。まず、戦国武将が群雄割拠しているような状況の南部ソマリア。海賊たちが跋扈している中部ソマリア。そして、その2つの地域にはさまれながらも武装解除をし、さらに独立までしている民主主義国家、ソマリランドです。ソマリランドはこのような立地にありながら、もう20年近く平和を保っている。これは一体どういうことか? と思って、行ってみたんです。
白木 「行ってみた」と言っても、そんな未承認国家に簡単に行けるものですか? ビザは……。
税所 ビザはエチオピアで意外と簡単に取れました! ソマリランドは20年間で一度しか自爆テロは起こっていないし、氏族という血縁のネットワークがうまく機能していて治安はとてもいいんですよ。近隣諸国からもいまだに誤解を受けているようですが。
白木 そうなんですね。たしかに意外かもしれません、「ソマリア」というと海賊のイメージが強いですし。
税所 それで、実際に行ってみると、ソマリランドで産業と呼べるものはラクダくらいだ、ということがまず分かって。
白木 ラクダ……というと、輸出業ですね。
税所 はい、主にサウジアラビアに輸出しているんです。ただ、ラクダの他に収入になるような産業はなく、仕事を求めて世界中に散らばったソマリランド人の送金で国は成り立っているらしいんですが。あ、これ、ソマリランドの紙幣です。(写真)
白木 すごい、初めて見ました。これでいくらですか?
税所 1枚、1000ソマリランド・シリングです。
白木 1000シリングで何が買えるんですか?
税所 バナナ1本が1300シリングくらいですね。過度にインフレしているんですよ。買い物に行くのに、大きなバックパックに紙幣を詰めていかないといけないくらいで。
白木 そうなんですね。
税所 こうやって現地でいろいろな人に話を聞いているうちに、高校運営をされているアブディさんという方に出会いました。彼は一度ソマリランドを出てイギリスで20年過ごしたのですが、教育事業を志し、積み上げてきたすべてを捨てて祖国のソマリランドに帰ってきたという熱い男です。ソマリランドは大学まではあるものの教育に関してはまだまだ発展途上の国なので、この方と「ソマリランドにはさらなる高等教育が必要だ! 今こそ革命を起こすべきだ!」と手を組みました。いわば、明治維新の志士のような方と出会えたわけです。
白木 うーん、すごい展開ですね(笑)。
税所 さっきもお話したとおり、平和とはいえ何もない国です。だから、産業を起こしたりビジネスをつくったりする人が必要なんです。そのためにも教育にテコを入れる必要があるだろう、と。
白木 それで、どうして大学院をつくろうと?
税所 ないからです。
白木 えっと……それだけですか?