前々回の本欄で、アメリカアラバマ州の5号線沿いにあるパインヒルという名の小さな町に、1億ドル近くを投じて大型銅管工場を建設した中国金龍精密銅管集団(以下は「金龍集団」と略す)を取り上げた(詳しくは「米国最貧郡にも中国企業が進出 深まる米中経済関係を直視せよ」を参照)。
しかし、「世界最大の精密銅管メーカー」と呼ばれる金龍集団については、私はあまり知らなかった。アメリカに初の工場建設に踏み切った同社の動機などについても、私はもっと掘り下げて調べる必要があるとも思っていた。そこでさらに、金龍集団に関する資料をいろいろと集めてみた。今日は、こうして集めてきた資料をもとに、その金龍集団にもうすこし焦点を当ててみたい。
米国進出の動機は反ダンピング対策
金龍集団の本社は農業の省というイメージが強い河南省の新郷市にある。そこで生産されるエアコンおよび冷凍用精密銅管は、世界における生産量の5分の1を占めている、という。
金龍集団の李長傑董事長はアメリカ進出の理由について、「アメリカでの工場建設を決めた主な理由は、我々に対するアメリカの反ダンピング措置の決定でした」と中国のメディアに語っている。
世界最大の精密銅管メーカーとして、金龍の製品はこれまでも北米、ラテンアメリカ、アジア太平洋、EU、中東などを含む多くの国や地域で販売されてきた。なかでも北米、特にアメリカは重要な海外市場である。以前は金龍の工場は主に中国やメキシコで生産を行っていた。
アメリカ商務省が2010年10月、国際貿易委員会が2010年11月に、それぞれアメリカへの中国とメキシコからの銅管輸出は国内業界に損害を与えていると認定したため、金龍は中国およびメキシコからアメリカに輸出しているシームレス精錬銅管に反ダンピング関税が課せられることになり、適用税率はそれぞれ11.25%と26.03%となった。これは金龍に大きなプレッシャーを与え、それ以降、同社のアメリカ市場における販売規模や市場占有率が明らかに縮小した。