それ以来、NOBUやマツヒサの新しいお店ができるたびに自然にうちのお酒もついていく、という形で日本酒を世界に広めているわけです。海外では「北雪イコールNOBU」というイメージが定着しているので、「北雪」といえば「NOBUに入っている酒だよね」と言ってもらえる。ノブさんとの運命的な出会いのおかげです。
お店のオープニングセレモニーでは必ず北雪の樽酒で鏡割りをしています。例外は、間もなくオープンするサウジアラビア・リヤドのNOBUホテルだけです。イスラム教の戒律が非常に厳しく、アルコールは一切入れられないので。
――ノブさんのリクエストで新しいお酒を開発することもありますか?
ノブさんは「こういう酒をつくれ」といったことは言わない方です。基本的には僕の方から「今度こんなお酒ができましたけど、どうですか?」と提案し、テイスティングしてもらって「お、いいね。リストに入れよう」と採用されるという具合です。ただ、今回新しくつくったお酒は、もう何年も前からノブさんから「ワインみたいにキレのあるお酒があるといいね」と言われていて、ついに完成したものなんです。日本酒はどうしてもお米独特の甘みが残る。ワインは原料がフルーツですから酸味があって、例外的にドイツワインなどに甘いものはありますが、一般的には甘みが残らずキレる。
昨年の冬、「キレのある酒」に挑戦してできたんです。遠心分離機を使って絞るとすごい酒になるんです。これが今、アメリカで登録中で、手続きが終わるとNOBUで飲めるようになります。