環境への負荷がほとんどない夢のバス。それを走らせるのは、東急グループが最初かもしれない。

 東急グループの学校法人、五島育英会が運営する東京都市大学(旧武蔵工業大学)と日野自動車は水以外の排出物をいっさい出さない水素バスを共同開発。この秋、東京駅周辺で実験的に巡回し始めた。

 東京都市大の水素エンジン研究の歴史は古く、1970年に日本初の水素エンジンの運転に成功。2009年4月には初の公道走行可能な水素バスを開発した。

 このバスは純度の低い副生水素でも運行が可能。副生水素とは製鉄所などの製造過程で副次的に発生し、これまでは廃棄されてきた。ある試算では、現状生み出されている副生水素だけで、30年度に予想される自動車向け水素需要量を賄えるという。

 本来、水素生成には電力が必要だが、副生水素を利用すれば、環境への負荷はほとんどゼロになる。

 水しか出ない夢のような水素バスだが、課題もある。

 1点目は、圧縮された水素の入ったタンクの安全性。衝突事故で爆発する危険性もある。しかし、今回、6本の水素タンクをバスの特性を生かし屋根の上に置いたことで、強い衝撃を回避できるようにした。

 2点目の問題はコスト。現状では5000万円程度と一般に売り出せるような値段にない。

 しかし、東京都市大が属する東急グループが渋谷の東急百貨店の巡回バスとして使用できないか興味を示しているという。また、首都圏の東急沿線を営業エリアとする東急バスが所有するバスは932台もある。

 単なる大学の実験室の話ではなく、東急グループの本業と結び付くことで、コスト低減の道が開けるかもしれない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 清水量介)

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