マネすることが成功の原理原則

 ……どんな共通点ですか?

後藤 「マネをしている」ことですね。斎藤一人さんの『微差力』という本に書いてあったのですが、富士山の山頂に脚立を持っていけば、日本で一番高い場所に立てます。でも、ほとんどの人は、自分で富士山をつくろうとするから、日本一になれない。つまり、「マネする」ことが成功の原理原則ではないでしょうか。

小山 熱心な社長ほど独自のやり方にこだわりますが、私たちは100%誰かのマネをしながら生きています。歯を磨くのも、食事をするのも、携帯電話やパソコンを使うのも、夜になったら寝るのも、すべて誰かのマネです。人のマネをすることは、決して恥ずかしいことでありません。それよりも、業績を上げられないほうがよほど恥ずかしい。完璧なオリジナルを目指しても、時間がかかるだけ。ボヤボヤしていると、時代の変化に取り残されてしまう。だとすれば、マネをするのが一番です。

 ……環境整備を導入するにあたって、社員の反対はありませんでしたか?

後藤 もちろん、「毎朝の掃除なんて、やりたくない」と、途中で会社を辞めた人もいました。でも、会社の考えにそぐわない人が辞めていくのは、しかたがない気がするんです。会社の幹部やトップセールスマンが「辞めます」と言い出すと社長は、「辞められると困る」と腰が引けてしまい、自分でつくった方針を取り下げてしまうことがあります。それだと、会社はいつまでも変わらないですよね。だから私は、やり続けたんです。

小山 公共事業の縮小により、地方のゼネコンは、厳しい戦いを強いられています。右肩下がりの業界の中で、後藤組が多くの仕事を受注できるのは、環境整備によって他者との差別化ができているからです。後藤組の現場を見ると、発注業者が驚愕するそうです。あまりにもキレイなので。月に一度、現場を点検する建設会社も他にはありません。だから、お客様に安心感を届けられるのでしょう。

後藤 見た目が変わっただけかもしれませんが、それによって社員の心も、お客様の心も変わるのだと思います。環境整備も小山昇も、本物ですね。

【朝一番の掃除=環境整備のポイント】
●我流や自己流にこだわっていると、成果が出にくい。
●マネこそ最高の創造である。工夫を加えず、そのままマネることです。

<著者プロフィール>
小山 昇(こやま・のぼる)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年生まれ。「大卒は2人だけ、それなりの人材しか集まらなかった落ちこぼれ集団」を優良企業に育て、「12年連続増収増益」を達成。日本で初めて、「日本経営品質賞」を二度受賞(2000年度、2010年度)。2001年から同社の経営のしくみを紹介する「経営サポート事業」を展開し、業種横断的に500社以上の会員企業を指導。指導企業のうち、「5社に1社は過去最高益」「13年連続倒産企業ゼロ」を達成。
2004年から「1日30万円のかばん持ち」制度を創設。小山昇のかばん持ちをすることで、現場で体感する経営者を日々育成中。現在、約70社・1年半待ちの人気ぶり。
そのほか、「実践経営塾」「実践幹部塾」「経営計画書セミナー」など、全国各地で年間240回の講演・セミナーを開催。現場の叡智が詰まった内容は、全国各地から「今日から仕事に役立つ」と現場見学会参加者があとをたたない。机上の空論は一切なし!実務中心の内容が口コミを呼んでいる。おもな著書に、『強い会社の教科書』『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』(以上、ダイヤモンド社)、『無担保で16億円借りる小山昇の“実践”銀行交渉術』(あさ出版)、『増補改訂版 仕事ができる人の心得』(CCCメディアハウス)など多数。