環境整備の本質とは?

 ……他のお店にはできなかったのに、どうして「auショップJR六甲道店」では、「そっくりマネる」ことができたのでしょうか?

小山 「環境整備(=朝一番の掃除)」という、トレーニングの結果でしょう。環境整備を継続したことで、社長が「右!」と言えば全員が右を向く組織ができ上がっていたんです。「これを全部パクるぞ!」と賀川会長が言えば、そのままマネできる集団になっていた。だから、マネできた。

賀川 「環境整備=清掃」と思われがちですが、「会社をキレイにすれば、売上が上がる」と考えるのは環境整備の本質ではないと思います。キレイにすることが目的なら、清掃業者に頼んだほうがキレイになりますよね。そうではなく、「決められたテリトリーを、毎日、コツコツと、みんなで磨く」というプロセスによって、組織の素地や土台や根幹ができ上がるのではないでしょうか。

 ……ちなみに、お二人の出会いは、いつですか?

小山 いまから20年近く前ですね。賀川会長がまだ、25~26歳くらいだったと思います。

賀川 経営とは何かを知りたくて、いろいろな経営者に会っていた時期でした。経営者に会うたび、「社長業とは、何ですか?」と同じ質問を投げかけました。けれど、誰に聞いても、ピンとくる答えが得られません。「資金繰りが……」とか言うだけで……。そんなとき、小山社長のことを知り、勉強会に参加したんです。小山社長は私の質問にこう答えてくれました。「社長業は、意思決定とチェックだ」と。

自ら武蔵野で武者修行! 
ルールがあるとイキイキする理由

小山 賀川会長が面白いのは、その後、「武蔵野で働かせてほしい」と言ってきたことです。自分でも会社を持っているわけですから、フルタイムで働くことはできません。なので、「3ヵ月間、月、火、水だけ」、武蔵野の社員になってもらいました(笑)。

 ……賀川会長は、どうして武蔵野の社員になってみたかったのですか?

賀川 潜入調査をしたかったんです(笑)。社長は一見独裁者みたいだし(笑)、会社にはルールばかりあるし、武蔵野の従業員がどんな気持ちで働いているのか、知りたかった。武蔵野では毎朝、パートの方々と一緒に、床磨きをしましたね。すると、どの人も「会社が楽しい」と言う。誰一人、小山社長の悪口を言わないんです。そのとき、私は気がついたんですね。ルールが決められているからこそ、社員がイキイキするんだ、と。

 ……賀川会長は、通信事業のほかにも、飲食店や化粧品の販売など、さまざまな事業を手がけていらっしゃいますね。

賀川 通信事業で業績を伸ばしたあと、もう一度、何もないところから事業を立ち上げてみたいと思って、社長職を譲り、飲食店を手がけることにしたんです。

小山 でも、せっかく始めたラーメン店が、火災に巻き込まれて燃えちゃったんだよね。

賀川 はい。