社内政治は「長期戦」である

  社内政治を進めるうえで、まず認識しておかなければならないことがあります。
 それは、「社内政治は長期戦である」ということです。

 新卒から定年まで働くとすれば、40年近く同じ会社に勤めることになります。近年は、転職を繰り返す人も増えましたが、それでも最低3~5年は会社に腰を据えなければ、これといった実績を残すことはできないでしょう。その長期にわたって、ある程度固定した人間関係のなかで過ごすわけです。

 これは重要なポイントです。なぜなら、長く一緒に働けば、その人がどんな人なのか、周りの人はすべて見抜いてしまうからです。小手先の処世術や、場当たり的な立ち回りなど、多少うまくやったところで、いずれ見破られてしまうのです。

 その代償は大きい。信頼を失ってしまうからです。
 政治力とは、人を動かす力です。しかも、可能なかぎり、相手に自発的に動いてもらう必要があります。そのために、お互いの力関係を背景に、さまざまな心理的な駆け引きをするわけです。しかし、その大前提として、「信頼」がなければ何も始まりません。

 そもそも、周囲の信頼を勝ち得ていない人に影響力はありません。周りに軽んじられているのですから当然です。それに、何かを人に働きかけようとしても、「あの人の言うことは信用できない」と思われてしまえば、たとえそれが正論であったとしても、まともに話を聞いてくれさえもしないでしょう。

「誰が言うかではなく、何を言うかが大事だ」とよく言われますが、私は疑問です。現実の世界でまず問われるのは、「誰が言うか」です。そのテストをクリアしてはじめて、人々は「何を言っているのか」を吟味しようと思うものなのです。

 だから、信頼は政治力のインフラです。
信頼なくして、政治などできはしないのです。