バンコク市街、昨年のクーデター後、自動車販売台数は急減。だが、絶対交通量は増え続け、渋滞が慢性化 Photo by Kenji Momota

 補足として、アメリカ以外の国のタクシー事情に少々触れると、ヨーロッパはアメリカと比べると「嫌な思い」をすることはかなり少ない。中国では大都市の上海でも、市街中心部から地下鉄で30分ほど行った地域の駅前には“白タクしかいない”場合が多い。インドやフィリピンでは、乗車してしばらく走った後、ドライバーが料金の上積みを要求してきたため、頭にきて下車した経験が多い。バンコクではほとんどタクシーが領収書を発券しない。そのためタクシーのオーナーに対し売り上げをごまかすドライバーが多い。そしてホーチミンでは、「タクシーの車体に描かれた会社別の番号を見て、目的地まで遠回りをしないなど、良質な会社のタクシーを選択した方が良い」と現地の駐在員が教えてくれる。

 このように、世界各地でタクシーに対する不信感を持っている人は多い。そうした課題を解決すること=ビジネスチャンス、として、Uberの事業は急拡大しているのだ。

クルマはもう余っている

 世界自動車工業連合会(OICA)によると、世界市場での自動車保有台数は12億台強と推定されている。

 クルマの普及率で見ると、世界平均は1000世帯あたり174台。これに対して、世界で最も普及率が高いアメリカは790台。世界最大の自動車製造・販売国の中国は91台、タイなど東南アジアが208台、そして日本は、603台である。

 また、世界市場での生産・販売は年間約9000万台で、今後は人口増加と経済成長によって東南アジア、中国、さらにアフリカでの需要が高まるため年間1億台の壁を越えることが確実視されている。

 世界市場が拡大するなか、普及台数が1000世帯あたり600~700台以上の国、つまり先進国での成長は今後、鈍化の傾向にある。そうしたなか、アメリカは2009年のリーマンショックの後、市場が順調に回復し、2014年にはリーマンショック前の全盛期とほぼ同じ、全需1700万台の大台を越えた。

 そのアメリカでは1世帯で複数台のクルマを保有するケースがとても多い。だが、クルマを実際に使用するのは、朝晩の通勤・通学時、買い物、そして週末のレジャーなど。仮に1日平均1時間使ったとしても、オーナーの所有期間の約96%は無人で駐車している計算になる。

 こうした非効率的な状況から、これを改善できないか? 必要な時に必要な分だけ、必要な場所で使えないか? という発想が生まれた。それを前述の“タクシー後進国”という要素が後押ししたのだ。

 “タクシー後進国”と“クルマの過剰供給”という社会背景のなか、UberやLyftが創業5年程度で急成長している理由は何か?そこには大きく3つの要素がある。

>>後編『UberやLyftの“シェアライド”は日本で普及できるか(下)』に続きます。

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