各国が対応を進めるなか
立ち後れる日本

 では、その他諸外国の状況はどうでしょうか。

 2012年にフィンランド・ヘルシンキ大学のサーパ•ソイニ博士による「Journal of Community Genetics」への報告によると、米国以外でもヨーロッパの一部の国では遺伝情報差別が法律によって禁じられています。

 ドイツ、スウェーデン、スイスの法律では、米国と同様に、生命保険のような財産価値の高い保険において、保険会社が遺伝情報を利用することを認めています。一方、オーストリア、フランス、ポルトガルは、すべてのタイプの保険において、遺伝情報の使用を禁止しています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3312949/

 イギリスでは、英国政府と生命保険協会が激しく議論した結果、法律の成立はできず、2017年までの期限付きで、保険会社の自主的な遺伝情報の利用中止を協定しています。ただし、米国などと同様に、高額な生命保険の加入者には、遺伝情報の利用が可能となりました。

http://www.genewatch.org/sub-529180

 またカナダも、遺伝情報差別を禁止する法律が成立する動きがあります。

http://www.parl.gc.ca/HousePublications/Publication.aspx?Language=E&Mode=1&DocId=6257111&File=24#1

 このように、ヒトゲノム計画に協力した先進国、すなわち米国、英国、フランス、ドイツなど日本以外の国においては、方針に差はあるものの遺伝情報差別に対する対策の強化が図られています。

 しかし残念ながら日本では、遺伝情報差別から身を守るための法律がありません。医療制度や文化的な違いはありますが、日本でも、遺伝子検査の普及にともない、同様の差別問題が起こる可能性は高いでしょう。誰もが安心して遺伝子検査を受けられるように、また臨床試験に参加できるように、日本でも関連する法・制度の整備が不可欠です。