これは、自分の主張を否定するコメントに対してでも、同様です。「その提案では、こういったリスクが心配ですね」と否定的なコメントをぶつけられても、それでもニコニコしながら「なるほど」と答えましょう。

 これは、「あなたのご意見の意味合いは分かります」という意味です。「あなたが主張したいことを理解します」を示しています。「リスクが心配」と言われたら、「その気持ち、分かります」という意味で、「なるほど」と言葉に出すのです。

 この場合、「我々もそこにリスクがあるのではないかと最初は考えたのですが、こういう理由で大きなリスクにはならないと考えました」とか「実は、確かにそこに多少のリスクは考えられるのですが、こういった方法でリスクの低減を図りますし、そのリスクを考慮しても、我々の提案の意義は大きいと思います」というふうに、続けていきます。

 つまり「二頷」から「三主張」に移っていくわけです。

 このときの主張は、基本的に、最初にしたプレゼンの主張と同様である「べき」です。く考えられた主張であれば、多少のネガティブ・ポイントはあっても、それを上回るポジティブな提案であるはずです。そう考えると、プレゼンや発表が終わった時点での質問やコメントで、簡単に主張を変えるべきではないのです。

 昨今、政治や経営の世界でも「ブレない」がキーワードになりました。簡単に主張を変えられたのでは、信頼して支持できない多くの人がそう感じたからこそ、「ブレない」ことに価値が出てきました。

 プレゼンや発表にも同様のことがいえます。もちろん「意固地」になるのではなく、相手の質問やコメントに真摯に答えつつ、自分の主張に、さまざまな角度からライトを浴びせていく感覚で臨みましょう。

 質問やコメントの主旨が、こちらが主張したいポイントとは別のところにあるケースがよくあります。そんなときにも、この「一礼二頷三主張」法は使えます。

 困り果ててしどろもどろになったり、相手の議論に付き合って本来の主張と違うことを言ってしまったりしがちですが、礼と二頷でその方の敵になることを避けつつも、主に他の聞き手に対して印象付けることを目的に、プレゼンや発表に盛り込んだ主張のポイントを繰り返すべきです。