「まず、雇用形態の違いですね。シングルファザーは男性で、正社員の比率が高いですから」(徳丸さん)

 背景には、さまざまな理由がありそうだ。たとえば正社員だった女性が、妊娠・出産を機に退職し、あるいは「マタハラ」で失職し、その後シングルマザーとなり、最低賃金に近い非正規雇用の掛け持ちで子どもを育てることになれば、「年間平均181万円の自身の収入と手当等によって」ということになるだろう。

 正社員に限っても、シングルマザーの平均年収は270万円。シングルファザーの平均年収は426万円。「収入面での性差別はない」と見ることは難しい。

「自立支援、就労を支援する以前の問題として、女性の社会的地位の低さの問題が大きいのではないかとも思っています」(徳丸さん)

 以上、紹介した数値は、現在のところ最新の「平成23年度全国母子世帯等調査結果報告」によっている。ひとり親世帯の状況を示す、胸の締め付けられる数値の数々を、ぜひ直接ご覧になっていただきたい。

 シングルマザーには、ひとり親ゆえの困難に、女性であるゆえの困難が加わる。それらの困難は、女性・ひとり親であるシングルマザーだけではなく、子どもたちをも直撃する。

子どもの生活・子どもとの生活は?
あるDV被害世帯に対する「支援」

もと助産院だった古い建物の中にあるCPAO事務所。夕食の準備が整ったところ
Photo by Y.M.

 徳丸さんは、ある40代のシングルマザーの事例を話し始めた。

「その方は結婚するまでは、正社員として働いていました。結婚して以後は10年間ほど専業主婦で、ずっと夫から、ひどい身体的暴力・精神的暴力を受け続けていました。小学校中学年と幼稚園年長の子ども2人がいるんですけど、夫は子どもたちも虐待していました」(徳丸さん)

 経済力がないから、逃げられない。働こうとすれば夫からのDVが激化するし、子どもたちのケアを誰かに依頼できるのかという問題もある。

「お母さん、1人で逃げるのだって大変だったと思うんですけど、必死で子どもたちを連れて逃げてくれて。親子3人でシェルターに入って生活保護を受けて、アパートで暮らし始めたんです」(徳丸さん)

 母親も子どもたちも、心身とも傷ついている。目に見える身体の傷は、1ヵ月もすれば治るかもしれない。しかし心の傷を治すには、年単位の時間がかかる。

「見た目ではわからないんですけど、ちゃんと話を聞くと、しんどさが分かります。『身体が思うように動かない』とか。すぐに寝込んでしまう方も少なくありません」(徳丸さん)

 DVや虐待によるトラウマが引き起こす心身の問題は、「そういうものである」としか言いようがない。暴力に怯える必要のない、本来ならば当たり前であるはずの日常が1ヵ月ほど過ぎたころ、それまで心の奥に押さえつけてきた痛み・苦しみ・悲しみが表面化してくることは珍しくない。むしろ、典型的なパターンだ。