2つ目は、価格競争に負けないことですね。会計事務所の商品は、商品そのもので差別化を図ることが難しく、どうしても価格を下げることに向かいがちです。しかし、単に価格を下げたら利益が出なくなってしまいますから、業務処理体制を整えることにより利益が出る体制をつくって価格を下げることが大切なのです。
3つ目のポイントは、「見せる価格」と「実際にもらう価格」を分けて考えることです。マーケティングに慣れていない事務所は、競合事務所のウェブサイトを見て単純に価格を下げてしまう。「自分たちも負けずに安く提供しなければ」と考えてしまうのです。しかし、「見せる価格」として最下限価格を提示するのは、あくまで集客商品だけです。例えば、顧問契約で「松竹梅」の3コースを用意した場合、安く見せるのは一番安い梅コースだけで、実際にはその後の提案によって「松」や「竹」で契約することも多いのです。ところが、「松」を「梅」の価格で提示する事務所も出ていて、それが業界全体のサービス単価を引き下げることにもなっています。
会計事務所のマーケティングと
営業力の強化法
――マーケティングについては、どのような方針で取り組んでいけばよいですか。
会計事務所でも、現在はウェブマーケティングが主な集客手段となります。例えば「経理代行」を受注しようとすれば、お客様がどんなキーワードで検索してくれるのかを想定しながら、「記帳代行」「振込代行」「経理代行」などと洗い出し、複数の検索ワードでWEB広告をかけていくことになります。ただし、経理代行に関してはサービスの存在があまり知られていないということもあり、ファクス、DM、チラシなどの紙媒体も併用して「こんなサービスがありますよ」と認知度を高めてからウェブサイトを閲覧してもらうことも必要になっています。
反対に、相続の分野は、ネット上で会計事務所を探すのが一般的になっていますから、ウェブマーケティングに集中するだけである程度の問い合わせは期待できると思います。ただし、トップを走るプレーヤーが絞られてきているので、エリアを限定してそのエリア内の実績では負けないようにするとか、エリア内のサービス対応をきめ細かくするなどで差別化を図っている事務所が多いですね。
あとは、相続の場合はショッピングセンターで無料相談会を開催することもよくあります。会計事務所はお客様にとっては敷居の高い存在なので、お客様が普段から利用している場所で相談会を実施することによって、敷居を下げる効果があります。
ウェブマーケティングの競争はかなり激しくなっていますが、このようにネットとリアルを組み合わせることで、業績を伸ばす余地はまだまだあると思います。例えば、ここ数年、ある地方の会計事務所の先生と相続マーケティングに取り組んでいますが、相続絡みのイベントがあると「相続なら○○先生だね」と声がかかるくらいブランディングができていて、地方紙なども取材に訪れてくれます。そこまで来ると本当に強いなと思いますね。