自分ならではの情報やアイデアを盛り込む

部長 「先日のクレーム、俺が見るところ原因は××だろう。そこを重点的に洗い直してくれ」
自分 「分かりました。すぐ確認してご報告します。それと一緒に、○○についても問題はなかったか、チェックしていいですか? 完璧を期したいので」
部長 「言われてみれば、その線もあるな」

→ 自分自身はクレームの原因は違うところにあると思っていたとしても、上司の意見をあからさまに否定するようなことはせず、追加提案する形で相手の気づきを促します。

部長 「今度のセミナー、参加の申し込みがもうひとつらしいじゃないか。すぐ手を打たないといけないな……」
自分 「はい、昨日からもう一度、案内のメールを送るほか、今日の夕方、担当者を集めてミーティングをします。部長のお知り合いにもご案内を出したいので、文案をつくってみました。ちょっと見ていただけませんか?」
部長 「おっ、そうか」

→ やるべきことはすでにやっていると伝えるとともに、部長にも関わってもらうよう働きかけます。

部長 「5月の連休、家族でハワイに行ったんだが、天気がよくて最高だったよ」
自分 「世界一おいしいって言われるパンケーキの店は、行かれました?」
部長 「うん、行った、行った。女房がどうしてもっていうんでね」
自分 「味はどうでした?」

→ ハワイでいま人気のスポットを知っていることを伝えるとともに、パンケーキという話題のテーマについて話を膨らませていきます。

部長 「来月から始まる例のプロジェクト、トップは○○君に任せようと思っているんだけどな……」
自分 「なるほど。そういえば以前、○○君が~と言っているのを聞いたことがあります。○○君はああ見えて俯瞰的に物事を把握するのに長けていますから、適任だというわけですね?」
部長 「君もそう思うか。できるだけサポートしてやってくれよ」

→ 部長の人を見る目の確かさを褒めつつ、自分の情報収集力もさりげなくアピールして信頼を勝ち取ります。

 このスキルは、いちいち相手の発言を反復したり確認したりするのを省き、自分が知っている情報や自分らしいアイデアを盛り込んで、一気に切り返していくのがポイントです。
 要は、自分も相手と同じ土俵に立っていることを知らせるとともに、話を一歩先へグイッと進めるのです。
 相手としては、「やるな」「わかってるな」と感じ、話をさらに深掘りしたりレベルを上げてきたりするはずです。

 なお、こういう切り返しをするには、事前に相手が取り上げそうなテーマについて予想したり、相手の話を聞きながら自分の引き出しの中に関連する情報はないかすぐ探したりすることも欠かせません。

一方的にしゃべりがちな部長に<br />「おっ、やるな」と思ってもらう<br />スマートな返し方とは?

谷本有香(たにもと・ゆか)
経済キャスター/ジャーナリスト/コメンテーター
大学卒業後、山一證券に入社、社内の経済キャスターに抜擢されるが、会社が自主廃業となり、フリーランスキャスターの道に。フリーの世界で仕事をさせて頂くために、試行錯誤しながら見出したのがこの「アクティブ リスニング」。この技術に出合ってからは、十数年にわたって経済キャスターの第一線で活動し、日経CNBCでは初めての女性コメンテーターに抜擢される。トニー・ブレア元英首相、マイケル・サンデル ハーバード大教授、著名投資家のジム・ロジャーズ氏などの独占インタビューをはじめ、世界のVIPへのインタビューは1000名を超える。Bloomberg TV、日経CNBCなどを経て、現在はフリーで国内外の著名人インタビューや、金融・経済セミナーのモデレーター、Huffington Post、TABI LABO等でコラムなどを手掛ける。また、テレビ朝日『サンデースクランブル』ゲストコメンテーターとして不定期出演中。2015年4月から、日経CNBC『夜エクスプレス』アンカー