『聞く力』という本が昨年頭の出版以来、版を重ねて140万部を超えるベストセラーになっているが、それだけ「聞く」ことへの関心が高まっているのだろう。必ずしも「聞き方」に限定されず、話のやりとりのしかたにより、相手から引き出されるものが違ったり、コミュニケーションがよくなる可能性があると感じている人が多いのかもしれない。4つの質問を問いかけるだけでストレスから解放され新しい気づきが得られる画期的手法、「ワーク」を実践するバイロン・ケイティの新刊、『新しい自分に目覚める4つの質問』について翻訳者がその魅力を語る。
相手の可能性を引き出す「問いかけの力」
コミュニケーションでもっとも重要なことは、「聴くこと」であると言われています。カウンセリングでもコーチングでも、基盤となるのは「傾聴」という考え方であり、態度であり、方法なのです。「傾聴」というのは、英語の「アクティヴ・リスニング」(能動的に聴くこと)の訳語。心から耳を傾けることで、相手が自分を振り返り、考えや気持ちを整理し、答えを自分で見つけたり、発想を広げることができます。
そして「効果的な質問」というのも、傾聴の重要な一部です。効果的な質問をすることで、相手が自分の考えを明確にしたり、逆に発想の幅を広げることができます。相手の可能性を引き出す関わり方ができるのです。むろんこうした問いかけは、相手に対してだけでなく、自分自身のためにも使えます。実際、自分自身に対して日々、どのような問いかけをしているかが、人生を方向づけると言っても過言ではないでしょう。
『すべては「前向き質問」でうまくいく』の著者であるマリリーG・アダムスは、「学習者の質問」と「批判者の質問」があると述べています。建設的で新しい可能性を見つけることができる「学習者の質問」とは、「事実はどういうことだろう?」「どんな選択ができるだろう?」「私は何を学べるだろう?」「何が可能だろう?」ということ。
それに対し、落とし穴に陥る「批判者の質問」とは、「何が悪いのだろう?」「誰のせいだろう?」「どうすれば自分の正しさを証明できるだろう?」「どうして私が痛い目に遭うの?」といったものになります。問いかけが異なれば、そこから導きだされる現実も違ったものとなります。