注意してほしいのは、「自由主義=保守主義」という命題は、西欧とアメリカに始まる資本主義と議会制民主主義を前提とした思想である、という点です。
「保守主義」という言葉は多様な意味を含んでいて、「国家主義」を意味する場合もあります。国家主義というのは、人権よりも国権(国家の権威)を上位に置く思想です。また、旧社会主義国であるロシアや一部の東欧諸国では、保守派は旧共産党勢力を指します。旧体制を保守する、という意味ですね。
本講義では、あくまでも「自由主義(資本主義と議会制民主主義)を保守する」意味で使います。
日本の政党の思想ははっきりしない…
アメリカの民主党ははっきりリベラルであり、社会民主主義政党ではありません。
マルクス経済学は、ソビエト連邦の崩壊で少数派になりました。経済理論としてはもうあまり学ぶ機会すらなくなっているかもしれない。退潮著しい。しかし、ソ連共産党に抵抗して勢力を大きくしたヨーロッパの社会民主主義は政治思想として現在も強いですよ。経済理論の盛衰とは別に考えてください。
Q 日本はどうなっているのでしょうか。
日本は、1990年代にがらりと変わりました。
第2次大戦後は政党が乱立しましたが、1955年に自由民主党と日本社会党に整理されています。この「55年体制」は1993年の政界再編まで続きます。
これが、93年の細川政権の成立で大きく変わりました。
細川政権は中道リベラル政権で、ヨーロッパのように明確になりましたが、長続きせず翌年には崩壊、自民党・社会党・さきがけ連立政権を経て離合集散が繰り返されています。思想史的には大混乱ですね。
2015年3月末現在、国会両院に議席を持つ政党数は12ですが、30議席を超えるのは5党です。
安倍政権は自民党・公明党の連立政権です。ただし、議席数は自民党が圧倒的多数で衆参両院407、民主党132、公明党55、維新の党52、共産党32の順です。
ややこしいのは、自民党には中道もいて、民主党には右派も左派もいることです。政策も入り乱れていますが、議席数が減った民主党はリベラル色を濃くしています。でも、欧米の政党のように明確ではありません。
日本共産党は社会主義社会を目指しているので、完全な社会主義政党です。先進国では今や珍しい存在ですね。ヨーロッパのような社会民主主義政党として社会民主党がありますが、国会の議席は両院で5つしかなく、存在感はありません。