広がったサードプレイスの考え方

 日本のパラレルキャリアにおいては、サードプレイスとは、家庭でも職場でもない場で、対話によって創造的なアイデアを生み出すことができ、多様な人たちと出会える機会を意味するようになっています。それは必ずしも、物理的な場所を意味しません。本業以外の第3の場。つまり、さまざまなコミュニティを意味するのです。

 たとえば、ちょっとした勉強会、研究会、あるいは同窓会なども、サードプレイスの一種に含まれるようになっています。プロボノの場や、NPOなどもサードプレイスの一種と考えられるでしょう。

 第3の居心地のいい場であれば、どこで集まろうとサードプレイスと言えます。会議室でも、カフェでも、居酒屋でも。ただ、いつも集まることができる、物理的な場所があると、それはありがたいですね。

 実は、すでに物理的な場所としてのサードプレイスが日本でも多く存在するようになってきています。いくつかの事例を紹介しましょう。

富士通ラーニングメディアがつくったイノベーションを生む場「CO☆PIT」

 たとえば、株式会社富士通ラーニングメディアは、イノベーションを生むことを意図して「CO☆PIT」というフューチャーセンターをつくりました。CO☆PITは、JR品川駅港南口の富士通ラーニングメディアの研修施設内に位置していて、対話を促すための独特な空間になっています。

 CO☆PITにおけるフューチャーセンターのコンセプトとは、いままでと同じものではない場、ここに来ると異業種の人たちが集っていて、未来や新しいビジネスを創り出す場を意味します。また、そのような場であって、人材にとっては井の中の蛙から脱却できる空間でもあります。そのうえで、コンセプトの中核は、「暗黙知をじっくりと対話をして、背景の異なる他社でのさまざまな経験から学ぶこと」になります。

 CO☆PITで、まず驚かされるのが入り口です。宇宙のような空間で、光線の照射を受けます。これは光線のシャワーを受けることで、大人の垢を落とし、大人の鎧を脱ぎ捨ててもらうことを意図しているそうです。たしかに、日常の大人の自分にこだわっていては、忌憚なく対話することはなかなか難しいでしょう。